夫の提案を聞いた時、最初は「ずっと住むわけでもないのに、もったいないな」と感じました。
でも考えたら、同業者たちは仕事場を構えている人も多くいます。もし私たち夫婦がそれぞれ仕事場を借りると、「自宅+私のアトリエ+夫の事務所=3軒分の家賃」。それを考えると東京以外にも家を持つことは、「自宅+私と夫の仕事場=2軒分の家賃」となるのでコスト的にもそんなに無理ではないはず。

そこでいろんな場所をリサーチした結果、軽井沢がいいのではと気がつきました。東京からは車で3時間弱、新幹線ならおよそ1時間なので東京での仕事が多い夫も日帰りできます。

古くからの別荘地なので、東京暮らしに慣れた私たちにとって便利な点が多いのも魅力的でした。収集所にはいつでもゴミが出せるし、外から来た人を受け入れてくれる風土があって居心地もいいし、おいしいレストランもたくさんあり、地元の野菜や食材が豊富な大きなスーパーマーケットやパン屋さんも揃っています。

決めたら行動の早い夫はすぐに家を探し、震災から数ヵ月後には中軽井沢に家を借りました。

ただ、急いで借りたので、しばらく空き家となっていた、あまり住みやすいとはいえない家でした。その時に知り合った不動産屋の担当者がとてもいい方で、その1年後には、新築で建てられる賃貸物件を紹介してくださり、現在はそちらに住んでいます。

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なにかの時に行ける場所が必要だった

引っ越しと違って、新たに家を増やすわけですから、生活に必要なものはゼロから揃えました。

ダイニングテーブル、ベッド、ソファなどの大型家具、洗濯機や冷蔵庫などの電化製品、パソコン、プリンターなど仕事道具。それ以外にも生活雑貨や日用品……。暮らしていくには本当に細々としたものが多岐にわたり必要です。

労力もお金もかかったけれど、なにかの時にはすぐに移動できるという安心感はとても大きなものだし、私たちには必要な選択だったのです。

東京から大きなSUVに犬と荷物を乗せて移動する、二拠点生活が始まりました。

夏以外はあまり行かなくなるかなと思いましたが、暮らしてみると秋の紅葉も美しく、観光客のいない静かな冬も過ごしやすい。じっくりとなにかに取り組む仕事にはもってこいの場所となり、毎月のように通うことになりました。

軽井沢にて。こうしてテラスで食事をすることも多い 写真提供/松尾たいこ

こうして東京と軽井沢を行ったり来たりする生活にすっかり慣れて楽しんでいたのですが、2015年からは新たに福井にも家を借りました。