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【結果が出るのは30年後】小笠原諸島・父島で行うウミガメ保全活動

「捕獲と保全」が共生する世界

提供:伊藤忠商事

母ガメの産卵が人の手で掘り起こされる

バサッバサッ、バチン、バサッ。闇夜の中、異様な音が聞こえてくる。産卵を終えたアオウミガメが後ヒレで砂を叩く音だ。時には自らの甲羅に鞭を振るうような音を響かせながら、力強いその肢が叩く砂は2、3メートル後方まで飛び散ってくる。母ガメが産んだ卵を外敵から隠すためのカモフラージュと呼ばれる行動だ。周りに観察する人の気配を感じてか、時に休みながらも懸命に砂をかけ続け、すでに1時間以上も続けている。
産卵時以外は海を泳ぎ続けるアオウミガメにとって、陸に上がり砂浜の奥まで上り穴を掘り埋める一連の繁殖行動は、子孫繁栄をかけた大仕事だ。そして母ガメがこのように必死にカモフラージュした卵は、孵化前にすべて人の手により掘り起こされ移植される――。

ここは、小笠原諸島・父島の大村海岸。島唯一の繁華街、といっても200メートルほどの道の左右に土産物店やカフェ、民宿など10件ほどが連なる目の前の浜だ。

産卵を観察しに来た観光客の声に気付いたのか、浜に面した自衛隊官舎の警備員が懐中電灯でこちらを照らした。この母ガメが産卵したのは、官舎前の芝生と砂浜との境目、防風林として植えられたモクマオウの根元。建物と50メートルも離れていない位置なのだ。

産卵を終えたアオウミガメ。体長120センチほどの体がすっぽり埋まるほどの穴を掘り、その中で産卵を行う

日本最大のアオウミガメの繁殖地、父島の約40の浜では、年間約1500巣(2018年)の産卵が確認される。中でも大村海岸は5月から8月の産卵シーズンには、毎日数頭が産卵に訪れる最大の産卵地だ。

母ガメが砂浜で産んだ卵は約60日後に孵化し、稚ガメは砂の中を這い出し海へと向かう。この時、より明るい方へと向かう習性があるため、自然界では月明かりや星が反射し砂浜よりも明るい海へと一心不乱に歩を進める。

孵化したばかりの稚ガメたち。母ガメは1回の産卵で100個ほどの卵を産む。孵化した稚ガメたちは一斉に穴から這い出す。

しかし、大村海岸のように繁華街が接近する場所では、稚ガメは電灯などの街の灯に吸い寄せられ、海にたどり着けず車に轢かれることも。そのため、父島でウミガメの保全活動に取り組むNPO法人エバーラスティングネイチャー(以下、ELNA)では、大村海岸の産卵を日々確認し、40日目以降に慎重に掘り出す。ELNAが運営する小笠原海洋センターの人工孵化場に埋め直し孵化させ、安全な浜で放流するためだ。

小笠原海洋センター内で孵化した稚ガメは、放流するまでセンター内の水槽で飼育される。
TIPS
ウミガメの雌雄は、周囲の砂の温度によって産卵後35日前後に決まる。そこで、雌雄に影響を与えないように産卵後40日前後に採集する。29度以上になるとメスになるとされるが、近年、温暖化により砂浜の温度が上昇している影響で、オーストラリア北部沖のサンゴ礁「グレート・バリア・リーフ」では、メスのウミガメが増加していることが観測されている。このまま温暖化の影響が進むと、雌雄のバランスが崩れ産卵数に影響が出ることも予測される。