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米中冷戦の最終段階「軍事衝突」はいつ、どこで勃発するか

中国は「毛沢東式持久戦論」で迎え撃つ

米中対立の4段階

先週一週間、中国へ行ってきた。今年3回目の訪中だが、この夏はアメリカとの「対決」が、暗い積乱雲のように覆いかぶさっていた。

正月に行った時は、アメリカとの対立に関して、すでに曇天ではあったけれども、まだほのかな薄日も差していた。昨年12月1日に、ブエノスアイレスG20(主要国・地域)サミットに合わせて、ドナルド・トランプ大統領と習近平主席の米中首脳会談が行われ、対話を継続することが決まったからだ。

 

ところが5月末に訪中すると、もはや豪雨で、雷鳴が轟いていた。すなわち中国は完全に戦闘モードに入っていた。「こうなったら最後まで戦ってやる」(奉陪到底)と、熱い闘志を燃え滾(たぎ)らせていたのだ。

そして今回はと言えば、「熱」はやや冷めていた。「醒めていた」と、諦念ムードを含んだ語を当てるべきか。長い雨季の始まり、「決戦前夜」という感じで、アメリカとの対立が長期戦になることを覚悟し、淡々と、そして着々と備えを始めていたのである。

実際、アメリカとの対立は、大河の水かさが増すように、ぐんぐんと「上昇」の一途を辿っている。このまま行けば堤防が決壊するのは間違いないが、それは誰も口にしない。

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冒頭から、やや抽象的に表現したが、中国は、アメリカとの対立を4段階で捉えている。具体的には、以下の通りだ。

〇第1段階 <貿易戦争>……2018年7月6日~継続中

昨年7月6日、第1弾として、米中双方が340億ドルの輸入品に25%の追加関税をかけ合った。同年8月23日、第2弾として、米中双方が160億ドルの輸入品に25%の追加関税をかけ合った。同年9月24日、第3弾として、アメリカが2000億ドルの輸入品に10%の追加関税をかけ、中国が600億ドルの輸入品に10%の追加関税をかけた。

今年に入って、5月10日、アメリカが第3弾の2000億ドル分の追加関税税率を、10%から25%に引き上げた。中国も6月1日、第3弾の600億ドル分の追加関税税率を、10%から25%などに引き上げた。

そして8月1日、トランプ大統領は、残りの約3000億ドル分に対して、9月1日から10%の追加関税をかけると発表した。8月12日現在、中国は具体的な報復措置について、まだ発表していない。

〇第2段階 <ハイテク戦争>……2018年8月13日~継続中

昨年8月13日、アメリカが国防権限法を制定した。この法律によって、ファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)、ZTE(中興通訊)、ハイテラ(海能達)、ハイクビジョン(海康威視数字技術)、ダーファ(大華技術)の中国先端企業5社は、1年後の2019年8月13日以降、アメリカ政府系機関の調達から排除された。さらに1年後の2020年8月13日以降は、この指定5社と取引があるアメリカ及び世界中の企業も、アメリカ政府系機関の調達から排除される。

続いて昨年12月1日、ファーウェイの創業者・任正非CEOの長女でナンバー2の孟晩舟副会長を、バンクーバー空港で逮捕した。

さらに、今年に入って5月16日、アメリカはファーウェイを「エンティティ・リスト」(制裁対象リスト)に加えた。猶予期間は3ヵ月で、8月16日からファーウェイは事実上、アメリカ製の部品の提供を受けられなくなる。また、それによって世界中の「ファーウェイ離れ」も懸念される。

一方、中国は5月28日、レアアースの対米輸出制限で対抗していく姿勢を見せた。また同月31日には、「不信企業リスト」を作っていくとした。だがいずれも、現段階において具体的措置は取っていない。

〇第3段階 <金融戦争>……2019年8月5日~継続中

8月5日、アメリカが中国を「為替操作国」に指定した。5月下旬に、アメリカ財務省は「中国は為替操作国ではない」と認定したばかりで、6月29日には大阪G20サミットでトランプ大統領と習近平主席との米中首脳会談も開かれたので、5日の発表は中国にとって、まさに寝耳に水だった。

同日、10年ぶりに1ドル=7人民元を突破する元安ドル高となり、中国は猛反発した。たしかに、アメリカ財務省の「為替操作国」の定義は、①対米黒字が年間200億ドル以上、②経常黒字がGDPの2%以上、為替介入による外貨購入が年間6ヵ月以上かつGDPの2%以上、という3条件を満たした国・地域であり、中国が引っかかるのは①だけだ。

客観的に見て、トランプ政権の今回の行為は「不当」なのだ。そのため、「中国を叩く」という明確な意図を持って為替操作国に指定したと見るべきである。

そもそも、1994年7月にビル・クリントン政権が中国を指定して以降、四半世紀にわたって為替操作国に指定された国・地域はないのだ。だが中国は12日現在、具体的な対抗措置は取っていない。

アメリカ財務省の7月16日の発表によれば、中国は5月現在で1兆1101億ドルのアメリカ国債を保有しており、海外ではトップである。これを一気呵成に売却するという対抗措置があるのではとも思うが、「アメリカ政府も他国も買い取らないし、暴落して中国が損失を被るので不可能」(中国の経済関係者)という。

 

〇第4段階(最終段階) <軍事衝突>……時期は未定

米中の軍事衝突がいつ起こるかは定かではないが、起こる場所は3ヵ所に、ほぼ限られている。南シナ海、台湾周辺海域、尖閣諸島海域を含む東シナ海である。いずれも中国の近海だ(日本の近海でもある)。

以上である。米中対立の「水位」が、すでに第3段階まで上昇した以上、それがいつ第4段階、すなわち最終段階の米中軍事衝突に移行してもおかしくないことは、中国側も重々覚悟している。

もっと踏み込んで言えば、最も「火薬庫」になるリスクが高いのは、来年1月に総統選挙が行われる台湾である。

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