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戦前に逆戻り?中国「為替操作国」指定が世界経済を破滅させる可能性

米中貿易戦争の加速が止まらない

関税引き上げ合戦の末、米財務省は8月5日、外国為替市場で中国の通貨・人民元が急落、1ドル=7元台に突入したことを受けて、中国を国内法で規定している「為替操作国」に指定したと発表した。トランプ米政権は、これまで以上に中国への圧力を強めることになるだろう。

このニュースの衝撃は大きく、先週前半の資本市場は世界同時株安の様相を呈し、1ドル=105円台のドル安・円高に突入する場面もあった。そこで、今回は、このニュースが意味するリスクを検証してみたい。

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25年前にも指定されたが…

米中の経済・貿易戦争が、関税引き上げ合戦から、自国通貨の低め誘導問題という別の分野に広がった裏には、来年の大統領選挙に向けたトランプ大統領のキャンペーンが暗い影を落としており、少なくとも来年11月に大統領選挙の投開票が終わるまで、米中の経済戦争の終結は期待できない可能性が強まった。

一方で、歴史を振り返ると、1929年の大恐慌後の自国経済保護のため、米国がスムート・ホーリー関税法を成立させて関税を大幅に引き上げたことや、各国が金本位制を放棄して通貨安競争にのめり込んだこと、そしてイギリスのポンド・ブロックに代表される保護主義的なブロック経済体制が進んだことなどは、ドイツや日本といった持たざる枢軸国が第2次世界大戦の戦端を開くきっかけになったとされている。現在の状況は、また一歩、戦前に近付き、深刻になったと言わざるを得ないのだ

まず、「為替操作国」とは何か説明しよう。米国では、財務省が国内法に基づいて、相手国が経常収支や貿易で優位に立つために為替相場を意図的に操作して自国通貨を低く誘導しているとみなした国を為替操作国と指定する仕組みになっている。指定した国に対しては2国間協議を求め、問題が解決しない場合は、輸入品への関税引き上げなどの制裁措置を採る可能性がある。

 

過去には、1980~90年代にかけて、韓国や中国が指定された例があり、今回の指定は、クリントン政権時代の1994年に中国を指定して以来、25年ぶりのこととなる。

その1994年の中国に対する為替操作国指定が結果オーライだったことから、今回も深刻な事態にはならないだろうと考えるのは甘いだろう。

25年前、米国は対中貿易赤字が急増したことを問題視して、中国を為替操作国に指定した。しかし、当時の中国の経済力はそれほどの脅威ではなかった。ドルベースの名目GDPでみても、米国、日本、ドイツ、フランス、英国、イタリア、カナダのG7諸国に次ぐ第8位の中進国に過ぎなかったのだ。

中国では当時、国際経済社会に仲間入りして、飛躍のきっかけを掴みたいと考える改革派が台頭。市場開放や投資誘致、経済の国際化といった米国の要求に応じ、2001年に中国がWTO(世界貿易機関)に加盟することにつながっていった。結果オーライだったわけである。

WTO加盟を通じた中国市場の開放は不十分な面も多々残ったが、当時の世界経済にとっては新たな成長エンジンになった。

 
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