マックス・ウェーバーの「支配の3類型」は余りにも有名です。高校の教科書にも出ていることがあります。「合法的支配」、「伝統的支配」、「カリスマ的支配」の3つです。
「伝統的支配」といえば王政や天皇、「カリスマ的支配」ならナポレオンみたいな人が思い浮かびます。これらについては作品を読んでいただければ深く理解できると思います。
そして「合法的支配」といえば官僚でしょう。官僚と聞くと、ある苦い記憶が呼び起こされます。
昔、諸事情によりある役所の消費者センターに行くことになりました。その消費者センターの入り口が変なのです。大きな立て看板に太い字で「大声を出さないでください」と書いてありました。
「なぜこんな看板が?」と首を傾げましたが、とにかく相談窓口の前に座り担当者が来るのを待っておりました。銀行の窓口のように隣接したブースとの間に仕切りがあって、隣の人の話がある程度聞こえないようになっています。
すると別の窓口から、
「おい、バカにすんな!!」
という大声が聞こえてビックリしました。声の方を向くと真っ赤な顔をしたオジサンがいきなり立ち上がって、椅子を蹴飛ばしズンズン歩いて部屋を出て行ってしまいました。本当に大声を出す人がいるんだとその時は思ったのです。
私の担当者は一向に現れません。やっと20分ぐらいして50過ぎのオジサンがやってきました。ファイルをドサッと置いて座った途端時計を見て、
「ああ、4時40分か。10分過ぎちゃったけど見てあげるよ。本来受付は4時30分までなんだけどね」
すでにこの言い方がカチンときます。それでも相談しないといけないので、時には図を書いて細かく事件の概要を説明しました。
「ああ、そりゃダメだと思うよ。諦めることだね」
「はあ?」
その担当者は時計を見ると、
「あっ、5時を5分オーバーしちゃった。じゃあ」
そう言うと席を立ち上がります。唖然としている私に、
「まあ、後は弁護士にでも相談するんだね」
と言って引っ込んでしまおうとします。
「おい、待ちなよ!!」
私もつい大声を出してしまいました。やっと入り口にあった看板の意味がわかったのです。