輸出管理を巡って日韓関係が悪化する中、いち早く打撃を受けているのは近年、インバウンドに沸いていた地方の観光地のようだ。特に韓国人観光客に人気の北海道では、各業界でキャンセルが相次ぐなか、不安な夏を過ごしている。現地の声は? 韓国人の本音は? 札幌からレポートする。
韓国では「愛国割引」まで登場
「確かにこの夏、目立つのは中国からの方で韓国人観光客は去年より少ないとは思います」
そう語るのは、札幌市内の有名シティホテルの従業員だ。実際、キャンセルも多いという。
「ホワイト国」除外などの輸出管理を巡っての日韓対立が深まる中で、昨年度60万人を超える韓国人観光客を集めた〝インバウンドの勝ち組〟である札幌に変化が起きている。
大韓航空は早々と9月からの釜山ー新千歳便の運休を決め、北海道ではないがLCCのティーウェイ航空も九州への複数路線の運休を発表した。
ただ、KBS(韓国放送公社)は「日本路線の減少は8月と9月も続く見通し」と報じたが、実は日本全体で捉えると、渡航する韓国人がそこまで顕著に減少しているわけではない。
韓国に詳しいライターが指摘する。
「韓国内のニュースを拾うと〝新日韓戦争〟であるとか〝日本による経済攻撃〟だとか、強い言葉が並んでいます。でも、日韓のビジネスは、もちろん半導体の素材などだけではなく、広範囲に渡っています。仕事で来日、訪韓する両国のビジネスマンはどうしたって一定数、存在する。だから大阪や東京などの主要都市の便には全く影響がなく、観光路線である北海道や九州への便が打撃を受けているようです」
釜山ー新千歳便の運休を決めた大韓航空は、その一方で今夏も仁川ー釧路、仁川ー女満別のチャーター便を飛ばしているが、ドル箱と見られたこの路線も乗車率は70%未満にとどまっている。
北海道全体への足が減少している中で、既に打撃を受けているのが飲食店だ。韓国人観光客に人気の札幌のカニ料理店「かに本家」は既に秋の団体予約で、1500席を超えるキャンセルに遭ったとの報道もある。

さらに韓国内では「愛国マーケティング」なる言葉が登場し、追い打ちをかける。
「韓国経済TVによると『近年でも最悪とも言える日韓関係』を背景に、『メイド・イン・ジャパンの代わりにメイド・イン・コリアを』という〝愛国キャンペーン〟を打ち出す企業や旅行代理店が出てきました。
たとえば、海外旅行をキャンセルした人を対象に宿泊費の割引を行ったリゾート施設は、客室が完売。その予約者の80%は、日本旅行をキャンセルした人だったそうです。他にもイベントの入場券やシティツアーを半額で提供する自治体や、日本旅行をキャンセルした人に二重の整形手術を半額にするという病院まであるようです」(前出・韓国に詳しいライター)