戦没者遺骨「112万体が未収容」…日本の本気度が試されている

DNA鑑定の困難と遺骨の未来
栗原 俊雄 プロフィール

すべて収容するまで600年かかる

ところが、今回厚労省は推進法の期間が終わった後も継続する方針を示した。

しかし筆者は思う。「第一次」が終わった後のように、自然消滅を図るのではないかと。本当に続ける気があるならば、予算を確保するための制度的枠組みを作る必要がある。

政府は海外の戦没者遺骨うち、これまでおよそ128万体が収容されたとしている。しかし筆者は疑念を持っている。128万体のうち政府の事業によるものは34万体。大半は遺族や戦友会などが行ったものだ。

遺骨の収容数を正確にカウントすることは、非常に難しい。たとえば頭蓋骨ならそれだけ、右の太もものならばそれだけと決めて「1体」を数えれば正確性は高まる。

しかし同一人物の頭蓋骨と右太ももの骨をそれぞれを「1体」とカウントすることもあり得る。また、敵味方が入り乱れて戦った激戦地では、日本人ではない者の遺骨を収容した可能性もある。

このように「128」万体というのは、それ自体検証が必要なのだが、本稿ではひとまずそれを前提に話を進める。

現状、およそ112万体が未収容だ。2016年に成立した促進法の運用にあたり、国が「収容可能」としているのは最大で約59万体だ。

推進法が施行された後、皮肉なことに遺骨の収容数は減っている。1年で1000体に満たない。このままでは、先に見た59万体だけを対象にしても、すべて収容するまで600年かかる。

 

海外での遺骨収容を進めるために

さらに他の53万体は、事実上収容をあきらめている。うち30万体は「海没」つまり軍艦や民間の輸送船などが撃沈され、亡くなった人たちだ。

海没遺骨=収容対象外というこの方針は、政府として一貫している。たとえば1994年3月25日の衆院厚生委員会で、この問題への対応を問われた土井豊・厚生省社会・援護局長は「古くから航海中の死亡者について水葬に付するということが広く行われてきており」「一般的には海全体が戦没者の永眠の場所」などと答えた。

確かに、航海中の船上で亡くなった人たちを海に流すことは、日本のみならず広く行われてきた。しかし30万もの遺体を国家規模で「水葬」するという判断は異例だ。葬ったのではなく、実態は国家による死体遺棄そのものである。