戦没者遺骨「112万体が未収容」…日本の本気度が試されている

DNA鑑定の困難と遺骨の未来
栗原 俊雄 プロフィール

DNA鑑定にあたる体制の現状

そうした批判の中で、厚労省は有識者による検討会議を設置した。

DNA鑑定に携わっている法医学の専門家や歴史学者、現場で遺骨収容にあたっている人ら13人が参加した同委員会は5月23日~7月25日、4回に渡って話し合い、「中間とりまとめ」がまとまった。

その結果、沖縄の10地域と同じく、遺品や埋葬記録がなくても当該地域で「推定される戦没者数が一定数以下」であることなど一定の条件を満たせばDNA鑑定を行う方針が固まった。

厚労省は硫黄島で亡くなった戦没者、近藤龍雄さんの遺族に鑑定の意思を聞き、意思が確認されたらすぐに、大坂山地区で収容された遺骨の鑑定をしなければならない。硫黄島は首都・東京の一部だ。ここで遺骨収容と身元の特定、遺族への引き渡しが進まなかったら、外国で進むはずがない。

また検討会ではDNA鑑定にあたる体制の現状が明らかになった。①鑑定に関わっているのは厚生労働省から委托された12機関(人)②研究や教育と行った本業の合間に鑑定を行っている③支給されるのは実費だけ④プライバシー保護のため、鑑定で得た研究成果は外部に発表できない、といったことだ。

 

以下、検討会のメンバーである法医学者の肉声を引こう。

「私どもは研究者です。研究成果を公表して、医学の進歩に役立てていただこうというのが仕事の主体なのですけれども、今回の鑑定に関しては、一切公表はしてはいけないというのが当初からの申し合わせになっています。戦没者の方のDNAで色々な情報を得ることができたり、技術的な面でこうなのだということがわかったとしても、公表することは一切できておりません。金銭的には試薬分のお金しかいただかなくて人も割かなければいけない。研究にもならない。委員の全員が考えていることだと思うのですけれども、ボランティアでやっている事業だと考えています」

こうした赤裸々な発言を受けて、中間とりまとめでは鑑定体制を充実させるために「鑑定を実施する大学の数が増えるような環境をつくる」ことが確認された。具体的には専門家の人材育成や、鑑定によって得た分析結果や技術を発表することなどである。厚労省は、必要な予算を来年度に計上すべく準備を進めている。