モノクロ戦争写真の「カラー化」で蘇る、74年前の日常と戦前の記憶

若者が取り組む、記憶の解凍プロジェクト
渡邉 英徳・庭田 杏珠 プロフィール

カラー化された「焼け跡」が生み出す対話

遠い昔のできごとが現在の日常と地続きになり、自分ごととして感じられるようになる――渡邉はその次の段階として、SNSを利用し、戦争体験をユーザの身の回りの時間の流れ= “フロー”に合流させることができるのではないか、と考えた。

この推測に基づき、筆者は現在も、主にパブリックドメインの写真をカラー化し、Twitterに投稿することで“フロー”を生成する活動を続けている。ユーザからは大きな反響を得ており、多数のリプライをいただいている。

このカラー化写真をもとにした“フロー”からは、写真そのものについての感想、撮影地の特定、写し込まれたできごとの時代考証など、さまざまなコミュニケーションが創発している。

例えば下の写真は、昨年8月6日、広島原爆の日に「72年前の今日」の写真としてツイートした、被爆1年後の広島の焼け野原を見つめるカップルの写真である。

これは、これまでに投稿したうち、最も反響が大きかったもので、500万回以上のインプレッションがあった。さらにリプライ欄において、戦争と平和、核兵器と社会の関わりについて活発な議論が交わされた。ふだんはそれぞれの陣営に分かれ、政治のありようについて論争をしている人々も、一緒になって戦争の悲惨さに思いを馳せているようだった。

さらに、このツイートに関する記事が新聞に掲載されたところ、それを読者として目にした沼田清氏(共同通信社)から、この写真が「共同通信社が1946年8月5日以前に撮影したもの」「胡町の福屋百貨店から南東方向を俯瞰したもので、後方の山は広島湾の金輪島である」「カップルの頭上に写っている新築の建物は旅館であり、改築を経て、飲食店として現存する」という情報が寄せられた。

これは、白黒写真として“ストック”された資料が、カラー化によって“フロー”となり、コミュニケーションと対話を誘発して、結果的により価値の高い情報を生み出した事例といえるだろう。