原爆投下の翌年に撮影された、広島市中心部の様子(ニューラルネットワークによる自動色付け))

モノクロ戦争写真の「カラー化」で蘇る、74年前の日常と戦前の記憶

若者が取り組む、記憶の解凍プロジェクト

時が再び流れ出す

戦前・戦中の写真はもっぱらモノクロフィルムで撮影されている。スマートフォンのカメラを携え、カラーの写真や動画で日常を記録している私たちは、色彩・動きを伴わない白黒写真を見ると、あたかも「凍りついている」かのような印象を抱いてしまう。

このことが、戦争の記録と、現在を生きる私たちの日常との距離を遠ざけ、自分ごととして考えるきっかけを奪っているのではないだろうか――。

このような問題意識のもと、渡邉は2016年12月から、筑波大学の飯塚里志氏らが開発したAI技術を応用し、白黒写真のカラー化を始めた。これは、約230万組の白黒・カラー写真から学習したAIによって写真を着彩するというもので、ウェブサービスとして誰でもかんたんに利用できる。

まずは実際にカラー化した写真をご覧いただこう。下の写真は、1945年8月6日、広島に原子爆弾が投下され、巨大なきのこ雲が上がった瞬間を、呉方面からとらえたものだ。

白黒写真ではグレーのグラデーションで表現されていた74年前の空が、現在の青空と同じように着彩されている。また、山や海面などの色彩も、私たちが日頃目にするものに近づいた。

このように、被写体が備えていたはずの色彩を可視化することによって、過去にも、現在と変わらない日常があったことが実感しやすくなる。原爆投下当日の呉と、私たちの日常が重ね合わされるのである。

下の写真は、空襲で炎上する呉の街の白黒写真と、それをカラー化した写真である。

炎上する呉の街(「呉戦災を記録する会」ウェブサイトより)の 元写真・カラー化写真
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炎の色彩が可視化されることにより、その動きと熱がより緊迫したものとして伝わってくる。私たちが目にしたことのある、現在の火災の写真と似た印象に変化する。

現代の私たちは、見知らぬ誰かがいま体験している「災い」がリアルタイムに共有され、自分ごととして感じられる時代を生きている。戦時中の写真も、カラー化されることによってあたかも「解凍」されるかのように時間の流れを取り戻し、過去の人々が感じた恐怖を私たちに伝えてくれるのだ。