就活で全滅した学生が「ラノベ作家」になるまでの迷走

高木敦史の迷走物語(1)
高木 敦史 プロフィール

そうか、漫画を描けばいいのか!

そういうわけで茶番程度の就職活動を終え、大学卒業後は学生時代のバイト先——PCでプログラムとかデータ処理とかする仕事です——にそのままダラダラと在籍し、日々漫然と過ごしていました。が、そんな中である転機を迎えます。

大学時代に所属していたサークルの先輩に、漫画家志望の人がいました。噂では聞いていましたが、本人はそれについて多くを語ろうとせず、また絵を描いているという雰囲気もまるでない人でした。

ある日その人の描いた漫画が有名な週刊少年漫画誌に掲載されたのです。それで、この人は本当に漫画を描いていたんだ、という驚きと共に発見したのは「漫画編集者にはなれなかったけど、だったら自分で漫画を描けばいいのか」ということです。

そこで私は頑張って、一年くらい絵を練習しました。

世界堂やユザワヤで画材を買い揃え、「スクリーントーンはアイシーが好みだな」とか「ペン先はゼブラがいいな」という画材選びから「集中線ってコマのフチから絶対はみ出るけどみんなどうしてるんだろう」という試行錯誤を繰り返し、おおよそ一年後、ようやく投稿用に31ページの漫画を描きあげました。

写真:著者提供

余談ですが、このとき感心したことがあります。漫画の新人賞の公募における規定ページ数はだいたい30ページ程度なのですが、これ、ちゃんとした話を書こうとすると短くて、スカスカの話にしようとすると長いんですよね。このページ設定にした編集部の人たちはきっと性格が悪いに違いない、と強く思ったことを覚えています。

 

さて、漫画を一本描き上げたら、次は持ち込みです。新人賞に郵送で応募するという手段もありますが、せっかく東京に住んでいるのだから直接持って行く方が手っ取り早いと考えました。

私はとある漫画雑誌の編集部に電話をかけ、編集者の方に漫画を読んでいただきました。彼は丁寧に読み進めてくださり、的確な批評と、もう一作描いてくるように告げた後で私にこのように言いました。

「君の感じだと、漫画よりも小説の方が参考になると思う」

私の描いた漫画は『近所で不思議な事件があって、巻き込まれて大変な目に遭うけど、最後はなんだかんだ平和に終わる』という、「ご近所SF」とでも呼ぶべき内容の漫画でした。そして、編集者は私に「参考になると思う」本を三冊勧めてくれました。

山本弘さんの『MM9』、米澤穂信さんの『ボトルネック』、そして谷川流さんの『涼宮ハルヒの憂鬱』です。