京アニ放火事件「まとめサイト」の罪を問う〜その正義は正しいのか

どんどん被害者意識が生み出され…
赤木 智弘 プロフィール

自分勝手なマナーやモラルが押し付けられ

こうした「パクリ」の矛先は決して商業作品にだけ向くわけではない。pixivなどの投稿サイトに絵をアップしているだけの個人の作品に対してまで、別の個人の作品に似ているといい出す人までいるのである。

商業作品であっても、よほど有名な作品でも無ければ似てしまっても仕方ないというのに、無数の個人作品に似ているも似ていないも無いはずである。また、絵柄が似ている、設定が似ていると言うだけでは著作権上の保護の対象にはならず、似ていたところでそれがどうしたという話ではある。

しかし、ごく一部の界隈では、そのような常識的な態度が通用せず、嫉妬や妬みはもちろん、内輪の自分勝手なマナーやモラルが押し付けられ、がんじがらめになっているような側面が存在するのである。容疑者は、こうしたまとめサイトや、作品発表の場から、「パクリは悪である」という偏った考え方を植え付けられていたのかもしれない。

 

また、この事件が報じられた当初、ネットでは「犯人は在日(韓国・朝鮮人)に違いない」や「NHKディレクターと容疑者に接点があったに違いない」などという情報が、主にまとめサイトなどによって流されていた。

「犯人は在日に違いない」は事件が発生した直後から。「NHKディレクターと容疑者に接点が」は、事件発生数日後から発生した。

「犯人は在日」という情報は、何らかの事件が起きた際に、もはやネットの定番として流される情報である。たとえ後から実際に犯人が在日であると分かったとしても、それは「その情報が正しかった」のではなく「でまかせがたまたま合っていた」に過ぎない。雨乞いの踊りをずっと踊っていれば、いつかは雨が降るのと同じである。

一方で「NHKディレクターと容疑者に接点が」には、一見、根拠らしきものがあった。事件が発生して少し後に「放火されたスタジオは、カードによって開閉するセキュリティが存在するが、当日は来訪者が多いためにセキュリティがオフになっていた」という報道が行われたのである。

これに目をつけた人たちがまとめサイトなどで「NHKのディレクターが容疑者にセキュリティの情報を流したに違いない!」という憶測を流し始めたのである。後に、放火されたスタジオには特にそうしたセキュリティはなく、夜間はシャッターが降りているが、昼間は普通の会社と同じように、開放されていたことが確認されている。