米中経済戦争が、世界的な通貨戦争の引き金を引こうとしている

円高が日本経済を直撃する
野口 悠紀雄 プロフィール

通貨戦争になると日本は直接に影響を受ける

中国通貨当局の元安容認を受けて、アメリカ財務省は5日、中国を「為替操作国」に指定した。これは、1994年以来、25年ぶりのことだ。事態は通貨戦争の様相を呈してきた。

また、トランプ大統領は、連邦準備理事会(FRB)に対して利下げ圧力をかけており、9月に追加利下げが行われるとの観測がなされている。また、ヨーロッパ中央銀行も秋に利下げを行うのではないかとの観測がある。こうなると、世界的な通貨安競争が始まる可能性もある。 

この問題は、当然、日本の金融政策にも大きな影響を与える。

 

ただし、中国は手放しで元安を進めるわけにはいかないことに注意が必要だ。

なぜなら、元安に歯止めがかからなければ、資産を中国国内から海外に持ち出す大規模な資本流出が加速し、中国の金融市場が不安定化するからだ。

以上のような国際金融市場の動きは、日本にも影響を与えている。6日の東京市場では、円相場が一時、1ドル=105円台半ばまで上昇した。

これは、世界経済のリスクが増すと、安全な資産と見なされている円に資金が流れるためだと考えられる。

高関税にしてもファーウエイ排除にしても、日本は影響を受ける。しかし、それはあくまでも間接的な影響だ。ところが、 通貨戦争となれば、日本は 直接の影響を受ける。

企業利益にはかなり大きな影響を与える。日本企業(とくに製造業)の利益は、円安で増加し、円高で減少する傾向があるからだ。今後円高が進行すれば、利益減少が顕在化するだろう。

マーケットを通じる影響だけではない。トランプ大統領は、かねてから、「日本が円安政策をとっている」という考えを表明していた。こうした批判が、日本をターゲットとする直接的な政策(例えば、自動車の輸入規制)に発展する可能性も否定できない。