米中経済戦争が、世界的な通貨戦争の引き金を引こうとしている

円高が日本経済を直撃する
野口 悠紀雄 プロフィール

貿易戦争進展に伴って元安が進んでいる

5日の中国・上海外国為替市場の人民元相場は、対ドルで続落し、1ドル=7・0352元となった。1ドル=7元を超える元安は、2008年5月以来11年ぶりだ。

これを受けて、中国人民銀行は5日朝、人民元の対ドル相場の基準値を昨年12月以来の低水準となる1ドル=6・9225元に設定した。一定の元安を容認したことになる。

これによって、追加関税の効果を打ち消し、輸出を下支えしようとする意図があるのだろう。

 

では、どの程度の元安になれば、関税引き上げの効果を打ち消せるのだろうか?

中国からアメリカへの財輸出は、2017年において約5000億ドル、2018年に約5400億ドルである。

ところで、上述のように、2019年5月初めまでの段階で、このうち500億ドルに25%、2000億ドルに10%の追加関税が課されている。これによって輸入額は、(500x25%+2000x10%)/5000=6.5%ほど値上がりしたことになる。

他方で元ドルレートの推移を見ると、2018年1月には1ドル=6.3元程度であったものが、貿易戦争勃発の影響で、11月には6.9元程度にまで元安になった。

そして、2019年2月には、6.7元程度になった。5月下旬には、2000億ドル分についての追加関税率が10%から25%に引き上げられたことに伴い、6.9元まで元安になった。

このように、貿易戦争の進展に伴って、元安が進んでいるのだ。

6.3元から6.9元までは9.7%程度の元安だから、これによって、関税率引き上げの効果(上述の計算では6.5%)は、打ち消されたと考えることができる。

では、今後はどうか?

第4弾の対象は上記のように3000億ドルだが、これは、2018年の中国からアメリカへの輸出の約55%になる。したがって、これに10%の追加関税がかかれば、輸出総額は5.5%増加する。

元の対ドルレートが5.5%下落すれば、その効果は打ち消されることになる。これは、1ドル=6.9元であるものが、1ドル=7.3元になることによって実現される。したがって、ここが、今後の元レートの1つの目安になるという見方がある。