米中経済戦争が、世界的な通貨戦争の引き金を引こうとしている

円高が日本経済を直撃する
野口 悠紀雄 プロフィール

リスクオフ志向が強まり金融市場が動揺

8月5日の株式市場で、ダウ工業株30種平均は大幅に続落し、前週末比767ドル(2.9%)安の2万5717ドルと、6月5日以来2カ月ぶりの安値になった。ダウ平均の下げ幅は今年最大で、2018年12月4日以来ほぼ8カ月ぶりの大きさだった。

6日午前の中国市場で、株価が大幅続落した。代表的株価指数である上海総合指数は一時3%超下落した。

6日の東京株式市場で日経平均株価は3日続落し、一時は前日比600円超下げた。終値は、前日比134円98銭(0.65%)安の2万0585円31銭となった。これは、7か月ぶりの安値だ。

長期金利(新発10年債利回り)は、6日にマイナス0.215%と2016年7月以来の低水準になった。

マイナス0.2%は、日本銀行の長短金利操作で誘導目標の下限として市場で意識されている水準だ。

原油価格も値下がりしている

株安、金利下落(債券価格上昇)、円高、人民元安、原油価格下落。これらは、投資家の「リスクオフ」(危険回避)と呼ばれる行動によって引き起こされるものだ。

 

外見上は、2016年半ばに起こったこととよく似ている。ただし、リスクオフが高まる原因は異なる。

2016年の際には、アメリカが量的緩和政策から脱却して金融正常化を開始し、そのため、リスク資金の供給が減少して、投機の時代が終焉したということが原因であった。

それに対して現在は、貿易戦争の帰結が見えないという不確実性の高まりだ。これによって将来の見通しが立ちにくくなったので、投資のリスクが大きくなった。このため、安全と考えられる資産に投資が向かうのだ。