米中経済戦争が、世界的な通貨戦争の引き金を引こうとしている

円高が日本経済を直撃する
野口 悠紀雄 プロフィール

米中両国の経済に悪影響が及ぶ

今回の対象には、中国からの輸入依存度が高い消費財が多く含まれている。スマートフォンやPC(パソコン)、衣料品、玩具など、消費者への影響に配慮してこれまで避けてきた品目が中心だ。

高関税が実施されれば、消費財が値上りし、企業業績も下押しされるだろう。

国際通貨基金(IMF)は、今年4月に発表した「世界経済見通し」において、米中両国が全ての輸入に対する関税率を25%に引き上げた場合、実質GDP成長率がどの程度低下するかを、いくつかのモデルを用いて推計した(World Economic Outlook April 2019; Chapter 4 - The Drivers of Bilateral Trade and The Spillovers From Tariffs; April 3, 2019、Box4.4、p.125)

 

その結論は、つぎのとおりだ。

(1)米中貿易は、短期的には25〜30%。長期的には30〜70%ほど落ち込む。

(2)これによって、実質経済成長率(年率)は、中国は0.5~1.5%ポイント、アメリカは0.3~0.6%ポイントほど落ち込む。

このように両国とも痛手を負うのだが、中国のほうが影響が大きい。これは、輸出依存度が高いからだ。

中国に生産拠点を持つ日本企業への影響も避けられない。タイやベトナムなどへの生産拠点移動などの動きが急ピッチで進むだろう。