法務省も困惑…相続は「早いもん勝ち」に変わっていた

相続法改正「最大の抜け穴」をご存知か
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実は「早いもん勝ち」になったのは、実家の相続だけではない。預貯金についても、他の相続人とは関係なく、自分で早く動けば得できるようになった。

老親の預金口座は、銀行に死亡が伝わると凍結され、おカネを引き出せなくなる。電気や水道の引き落としも止まり、葬儀費用を引き出すこともできなくなる。

これを解除するには、相続人全員が遺産の分け方に同意をして、遺産分割協議書に実印をつく必要がある。だが、ここでもめれば、預貯金についてはまったく手を付けることができない。

 

遺産分割前に現金ゲット

そこで、7月1日からは遺産分割協議が整わずとも預貯金を引き出せる仮払いがはじまり、他の相続人の了解なしで、自分の相続分の預金を確保できるようになった。

東京都在住の高山和子さん(70歳・仮名)が、今年6月に亡くなった夫の相続について振り返る。

「夫は遺言書を残していませんでした。遺産の分け方について話し合いをすることになったのですが、3人の息子が取り分を巡ってごねだして、今も遺産分割協議に終わりが見えません。

その間、夫の口座は凍結されているためおカネを下ろすことはできず、私自身の口座も底を突きそうです」

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生活の危機に陥っていた高山さんだが、7月1日になり、仮払い制度が始まったことによって救われた。自分の法定相続分の3分の1(上限150万円)を引き出すことができたのだ。

150万円と聞いて少ないと感じる人もいるだろう。さにあらず。この150万円はあくまでも、1つの銀行につき、という条件なのだ。

「もし10行に口座があれば、最高1500万円を遺産分割前におろせる。実際、1人あたり平均3個以上の銀行の口座を持っているという統計があるので、450万円程度のおカネは先に仮払いでもらえることが多いのです」(税理士・山本和義氏)

高山さんも振り返る。

「夫の銀行口座から計400万円を引き出すことができ、当面の生活費を確保できました。まずは一安心です」

仮払い制度は葬儀費用のためのものと思われがちだ。だが実は、遺産を他の相続人より先に確保してしまえる制度なのだ。

仮払いの利用をするにはまず、通帳預金証書で、どこの銀行に故人の口座があるかを確認する。そのうえで窓口に行き、全店照会を依頼して全ての口座を洗い出す。

必要な書類は故人の除籍謄本相続人全員の戸籍謄本自分の印鑑証明書だ。さらに遺言書もなく分割協議がまとまっていない事情を説明する。仮払いの際には、他の相続人の承諾やハンコはまったく不要だ。

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