法務省も困惑…相続は「早いもん勝ち」に変わっていた

相続法改正「最大の抜け穴」をご存知か
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法務省は「例外」と言うが…

では、今回の改正で、なぜ遺言書を無視するようなことができるようになったのか。弁護士の田中康敦氏が解説する。

「この法改正には、遺言や遺産分割の内容を知ることができない第三者の取引の安全を守る目的があります。

実はこれまでも家の権利の売却自体はできたのですが、遺言書の効力が強かった。実家を相続するという遺言書を持った相続人が出てくれば、不動産業者はせっかく買った家の権利を諦めるしかありませんでした。法改正の結果、こうした不動産業者の権利が守られることになったのです」

言ってみれば、よかれと思ってやった法改正が思わぬ「抜け道」を作ってしまったのだ。それにしても、肉親に内緒で、遺言書を無視して勝手に家の権利を売ってもいいというのは大問題だ。

 

この抜け穴について、法務省民事局の担当者が本誌の取材に答えた。

「遺言書を無視して勝手に実家の権利を売れば、他の相続人から民事訴訟を起こされる可能性も高い。ですので、ありうるとしても例外的です」

逆に言えば、今回の法改正が「例外」を許してしまった。遺言書を無視して、自分の法定相続分の実家の権利を売ってしまうのは、新しい相続法上はセーフなのだ。

次郎さんが実家の持ち分を売った後、兄の太郎さんは損害賠償請求を次郎さんに対して起こすことは可能だ。

ただし、億単位の遺産ならともかく、数百万円の争いのために、肉親に対して民事訴訟を起こすハードルは高い。結果、「早いもん勝ち」で取り逃げすることができてしまう。

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では、先に持ち分を登記して売却するには、具体的にどのような手続きを踏むことになるのか。

揃えるべき書類は、戸籍謄本(故人の出生から死亡までのものと、相続人全員のもの)、故人の住民票の除票、相続人全員の住民票、固定資産評価証明書の4種類だ。

兄弟の戸籍謄本や住民票については、通常、勝手にとることはできないが、相続手続きという理由があれば、取得することができる。

登記申請書に集めた書類を添付して、実家がある場所を管轄する法務局に提出する。

登記申請書はA4の紙に死亡日、不動産を取得する人の住所と氏名、電話番号、固定資産税の価格と登録免許税の金額、不動産の表示(地番など)を記載する。

必要な書類は、相続人1人ですべて入手でき、手続きも1人で行える。あとは他の相続人よりも早ければそれでいい。

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