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知的障害のある19歳殺人犯は、父親からおぞましい暴力を受けていた

虐待された少年が事件を起こした理由

「心の闇」の正体とは何か

「誰でもよかった。とにかく、親父を困らすために人を殺したかった」

2008年11月、19歳の少年はこう語り、トラックで会社から帰宅途中の男性(24歳)をはねて殺した。

これまで私は川崎中一男子生徒殺害事件など、いくつもの少年事件を取材してきた。あまりに残虐な事件が起きた時、メディアはその動機を「少年の心の闇」と曖昧な表現にして片づけてしまいがちだ。そして一般の人もそれでわかったような気持ちになる。

だが、「心の闇」という表現は何も表していない。メディアも人々も、事件を理解した気になって加害者を批判したり、社会システムの不備を嘆いたりしているだけなのだ。

では、「心の闇」の正体とは何なのか。

私は『虐待された少年はなぜ、事件を起こしたのか』(平凡社新書)で、全国の少年院や更生施設を回ることで、その正体を明らかにした。

「心の闇」の形について具体的なことは拙著をご参照いただきたいが、ここでは数多あるうちの一つである、知的障害と虐待が絡んだ末の事件について述べたい。

 

最初に断言しておくが、知的障害があるからといって事件を起こすということはない。知的障害があっても、大半の人々がごく普通の日常生活を営んでいる。

だが、少年院や医療少年院にいる少年たちを調べた時、通常よりも高い確率で知的障害やボーダーの子がいるのも事実だ。なぜかといえば、知的障害に生育環境の悪さが加わった時に、その子の人格が歪められやすくなるからだ。

少年の非行は、専門的には「行為障害」と呼ばれている。

その子が持っている生来の脳機能の性質(生物学的要因)に、虐待のトラウマなどの心理的要因が加わり、さらにいじめや差別などの社会的要因が重なることで、本人が様々な問題を抱えて非行をしてしまうのだ。

知的障害のある少年の非行に関しても同様だ。知的障害があれば、健常者の子とくらべて上手に立ち回るのが苦手だ。ゆえに、親からの虐待がエスカレートしやすかったり、それによる悪影響を受けやすかったりする。さらに、学校でもその特性ゆえにいじめや差別にあったり、挫折経験をつみ重ねてしまう。

親が無理解であれば、少年にとって悪いことは雪だるま式に膨らんでいってしまう。結果として、それがその子の人格を歪めることになるのだ。