隈研吾、安藤忠雄らがデザイン。いま、「リノベーション建築」が熱い!

歴史ある建物と現代の冴えたデザインの融合
常松 祐介 プロフィール

土地の営みに根ざしたデザイン

もちろん、こうしたリノベーションのデザインは、歴史的な建物に対する、深いリスペクトに根ざしていることが前提だ。リノベーションの第一歩は、その建物が歩んできた歴史と、それを取り巻く土地の営みを、よく知ることから始まる。

その好例が、栃木県・芦野の「石の美術館 STONE PLAZA」である。栃木県・芦野は、かつて「芦野石」の産地として賑わった、採石業のまちだ。採掘は明治時代から始まり、1960年代にはストーンラッシュとでもいうべき活況を呈したという。しかしその後、海外からの輸入石材に押され、芦野の採石業は勢いを失っていく。

 

そんな寂れゆく芦野を象徴するかのように、まちの中心部には芦野石で築かれた古ぼけた石蔵がいくつも打ち捨てられていた。その何とも物悲しい風景を見かねた芦野の石材店オーナーが、建築家・隈研吾とタッグを組み、石蔵を美術館として再生させるプロジェクトを立ち上げた。

隈は、芦野の石工たちと協働して、石材を使った新たなデザインを生み出すことに挑戦。試行錯誤の末、厚さ5センチの薄い石片を積み重ねる新構法により、石でありながらも軽やかな、全く新しい表現を実現させた。隈はこれを、「ポーラスな(多孔質の)組積造」と呼ぶ。

戦前の石蔵と軽やかな新棟が並び立つ、石の美術館STONE PLAZA

美術館の設計にあたっては、この新構法が最大限に活用された。戦前に建てられた3棟の石蔵の間を、ポーラスな組積造などによる新棟で、つなぐようにデザイン。

こうして2000年、重厚な石蔵と軽やかな石片のデザインが隣りあい、石という素材の新しい可能性を感じ取ることができる、美しいミュージアムが誕生した。まさに、その土地の営みに寄り添う中で生まれた、優れたリノベーションといえる。

使い方をリノベーションする

こうした、地域に根ざしたリノベーションの取り組みは、多くの人々を引きつける地域資源となりうる。ちょうど今年4月に文化財保護法が改正され、文化財をただ保存するのではなく、地域資源として積極的に活用していく方向に舵が切られた。そこで課題となってくるのが、歴史的な建物に対して、現代的な活用方法をどう見出していくかである。

その成功例といえるのが、金沢市民芸術村だ。戦前の紡績工場の倉庫群が、市民の芸術拠点へと再生された事例である。金沢駅の南西にある大和町では、大正時代から巨大な紡績工場が操業しており、繊維王国と謳われた石川県の殖産興業を牽引していた。工場は戦後も操業を続けていたが、長引く繊維不況の中、1993年に閉鎖。工場用地は市へと引き渡され、建物の取り壊しが始まった。

そして、まさに、工場の一角に残る6棟の倉庫が解体される寸前で、当時の金沢市長が取り壊しに待ったをかけた。結果、工場倉庫だけが奇跡的に残され、演劇・音楽・アートなど様々な活動が展開される芸術拠点として、生まれ変わったのである。

金沢市民芸術村の正面外観。内部では様々な芸術活動が展開される

金沢市民芸術村の取り組みがユニークなところは、その運営方法にある。運営は市民主体の自主管理方式で、利用者は元の状態に戻せる範囲なら、壁に釘を打つことも自由。市民が主体的に使いこなせるから、金沢市民芸術村には、あてがわれたハコモノの施設にはない、活気があふれている。

自由な運営方針と、工場倉庫という空間は相性も抜群だ。工場倉庫の飾りけのない力強い空間は、どこかアンダーグラウンドな空気をまとい、市民の自由な創作意欲をかきたてている。このように、元の建物のポテンシャルをうまく引き出すことで、新たな使い方を見出すのもまた、リノベーションの大切な役割の一つである。

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