隈研吾、安藤忠雄らがデザイン。いま、「リノベーション建築」が熱い!

歴史ある建物と現代の冴えたデザインの融合
常松 祐介 プロフィール

リノベーションによって蘇らせる

そこで、リノベーションの出番である。リノベーションとは、歴史ある建物に現代のデザイン・機能を加えて蘇らせること。歴史ある建物ならではの味わい深い佇まい、はっと目を見張るような現代の冴えたデザイン、その背後に眠る土地や建物の記憶。リノベーション建築には、これらの魅力がぎゅっと詰まっている。

 

それでは、「国際子ども図書館」では、どんなリノベーションが行われたのだろうか。まず、正面に突き刺さるガラスの通路は、エントランスへのアプローチを確保するために、新しく付け加えられたものだ。

建物裏側のガラス面とコンクリートのコアは、設備やエレベーターなど、現代の施設には欠かせない機能を納めるために増築されたものである。これら増築部分は、単に必要な機能を納めているだけでなく、デザインとしてよく考え抜かれている。

たとえば、斜めに刺さるエントランスへの通路。これは、あえて軸を斜めに設定することで、矩形に計画された既存の図書館に対して、はっきりと区別をつけている。素材も、鋼とガラスを用いて軽やかな表現が追求されており、もともとの帝国図書館の装いとは見事に対照的である。

建物背面では、左右のコンクリートのコアから鋼棒をピンと張り、その鋼棒から大きなガラス面を吊り下げる構造形式を採用。これにより、まるで針金のように華奢な構造で支持された大ガラス面が成立している。

そして、これが、レンガや石材でできた帝国図書館の重厚な佇まいと対峙することで、鮮やかな新旧対比が生まれている。こうした大胆なリノベーションは、安藤忠雄建築研究所と日建設計の設計によるものである。

ここで用いられた設計手法は、「対比のデザイン」と呼ばれるものだ。そこには、過去の装いを不用意に模倣するのではなく、現代のデザインによって必要な改修を加えて、建物を次の世代へと手渡そうとする哲学が込められている。

ヨーロッパの「対比のデザイン」

これまで日本では、国際子ども図書館のような、大胆な「対比のデザイン」が試みられることは少なかった。しかし、ひとたびヨーロッパに目を向けると、「対比のデザイン」はむしろベーシックな手法といえる。筆者は、ヨーロッパを旅し様々なリノベーション建築を見てきたが、日本では考えられないような奇抜なアイデアに、たびたび驚かされた。

まず、例として挙げられるのが、ドイツ・ドレスデンにある軍事史博物館。旧市街より伸びるトラムから降り立ち、初めてその姿を目にしたときは、思わず目を疑ってしまった。クラシックな構成の洋館に、天を衝くような「くさび」が突き刺さっているではないか。

ドイツ連邦軍軍事史博物館の正面外観。鋭利なくさびが強烈な印象を与える

もともとこの洋館は、19世紀後半にザクセン王国の武器庫として建設されたもの。第二次世界大戦後は、東ドイツの軍博物館などとして利用されていた。

その後1990年、長らく東西に分断されていたドイツの統一が実現。博物館では、新生ドイツにふさわしい内容へと展示計画を一新すべく、大胆なリノベーションが行われた。くさびは、この際、新たに加えられたものである。その鋭利な刃物のようなフォルムは、分断されていた東西ドイツの歴史を象徴するかのようだ。

さらに、このくさびが指し示す方向に、重要な意味が込められている。くさびは、第二次世界大戦中、街を壊滅させたドレスデン爆撃の際、爆撃目標となった旧市街の一地点を、まっすぐ示している。

くさびの上部は、市街を見下ろす展望台となっており、来館者はそこから、瓦礫の山と化した旧市街の在りし日の姿に思いを馳せることができる。あえて調和を打ち破るように、洋館に打ち込まれたくさび形の鮮烈なフォルムは、戦争の記憶を一つのかたちとして刻みつけているのだ。

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