# 政治・社会

警察の「GPS捜査」は、どれほどプライバシーを暴くのか

「場所がわかる」以上の恐ろしさ
亀石 倫子 プロフィール

「場所がわかる」どころではない

「本当にピンポイントでわかるんだね」

最後に公道から目視できない場所に停車している場合でも、位置情報によって車両を捕捉できるかという実験に移る。逃走車が、再び行き先を告げずに移動を開始した。

ここから、追跡車は数分おきに位置情報を取得しながら追尾を続けた。逃走車が向かった先は東寺。追跡車には、位置情報によって逃走車の動きが手に取るようにわかった。

 

「すげえな、これ」

後部座席から、小林が声を上げる。

「あっちに行ったよ」

亀石が言う。逃走車とは異なり、追跡車の車内は明るかった。位置情報がピンポイントで取れ、逃走車の動きが手に取るようにわかる。ふと、東寺周辺に着いた逃走車が、奇妙な動きを見せる。東寺の周辺をグルグル回っているようだ。

「何、これ? フェイント?」

「いや、道を間違えたのかなあ?」

小林が口にする。実証実験の条件、センシティブ情報の取得の一部として宗教施設の駐車場に入ることが決められていた。

「惑わせようとしているのかな?」

小林が続ける。西村は亀石の指示を受けながら黙々と運転している。

「わざとなんじゃないの?」

亀石も同調する。

「あいつら、逃げられると思ってんのか?」

やがて逃走車は東寺の敷地内で動かなくなった。午後2時25分だった。間をおかず、追跡車は6分後の2時31分に東寺の駐車場に入った

「本当にすぐ来たという感じですねえ。トイレに行く暇もなかったぐらいですよ」

逃走車に乗っていた小野が感心する。

「グルグル回ってたけど、何かやってたの?」

小林が尋ねる。

「道を間違えたんだよ! ったく、駐車場の入口がぜんぜんわからなくて、東寺は目の前にあるっていうのに、グルグル回んなきゃいけなかった」

舘は、相変わらず体調と機嫌が悪そうだ。

「一度、東寺から離れなかった?」

 亀石の問いかけに舘が再び答えた。

「ああ。入口がわからないから、もうこっちから回るしかないと思ってね」

小林が口を開いた。

「そこまで細かくわかるっていうことだね」

実証実験の成果は十分に得られた。

ただし、この実証実験は、実際に取得された位置情報がプライバシー性の高い場所も暴く「わかりやすい資料」を提供するものにすぎない。弁護団の主張する「いかなる場所であっても、一回のGPS位置情報取得により、重要な権利・利益を侵害する」という理屈を証明するものにはなっていない。

それでも、インパクトは十分にあった。

いかがだったでしょうか?
GPSがいかに個人の移動を筒抜けにし、それを警察が秘密裏に調査していた。その重大性が亀石先生達の「実験」で明らかになったかと思います。
本書では、その重大性をいかに法律と言葉の力で証明するか。またしても、大きな困難が先生達を襲います。それをどのようにして乗り越え、GPS捜査の違法性を認めさせたか。
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