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# 政治・社会

警察の「GPS捜査」は、どれほどプライバシーを暴くのか

「場所がわかる」以上の恐ろしさ
皆様、こんにちは。現代新書アルバイトのショウです。
本日は、現代新書の近刊「刑事弁護人」をご紹介させていただきます。
警察が秘密裏に行っていた「GPS捜査」。その違法性が争われ、最高裁が「令状なきGPS捜査は違法である」と判断したことで話題となりました。その裁判で弁護士として関わられた、亀石倫子先生の闘いを、息の詰まるような臨場感で描かれています。
その中でも、僕が特に面白かった箇所を、皆様と共有させていただきたいと思います。
警察が「GPSはなんとなくの位置しかわからず、プライバシーの侵害には当たらない」という事実と異なる発言をし、それに憤る弁護人団。そこで彼らが打った手は、「実際に車にGPSを取り付け、その正確性を証明する」というものでした。
なんとなく、裁判所で喋ってる人というイメージが、弁護士にはあるかと思いますが、先生方がいかに泥臭く真実を証明しようとしているか、その迫真の姿をぜひ御覧ください。

警察が嘘をつくのなら

実施計画は、発案者である西村が策定した。裁判所に証拠として提出するには、信頼できるものをつくらなければならない。そのためには目的と方法が重視される。

目的は2つある。第1の目的は、GPS端末の精度の測定と、センシティブな情報の把握・特定可能性の実証だ。あらかじめピックアップした複数の地点にGPS設置車両を停車させ、位置情報を検索。地図上で位置を特定できるか確認する。

 

そして第2の目的が、見失った移動車両の追跡可能性である。追跡車両がGPS設置車両を検索しながら、目視できない位置にあるGPS設置車両の追跡を行う。

具体的には、次の3点で行うことにした。
1・位置情報の精度
いかなる条件において、どの程度の誤差が生じるのか。あるいは、検索不能になるのか
2・高速移動
高速で移動する車両を、GPSは正確に捉えられるか
3・自由移動
高速で大阪から京都に移動。京都からGPS設置車両は行き先を告げずに自由に移動する。それを尾行の素人がGPSの位置情報を頼りに追尾できるか。センシティブ情報としては病院・宗教施設・拘置所に行くことだけは決めたが、どの病院・宗教施設・拘置所かはランダム

GPS実験、開始

2015年2月14日、晴れ。その朝、大阪は最低気温が1.5度まで下がり、厳しい冷え込みとなった。最高気温も9度に届かず、風もかなり強かったため、体感温度は低い。

弁護団は午前10時に大阪拘置所の駐車場に集合した。周囲に高層の建物はない。16台収容する駐車スペースにも障害となるようなものはない。位置情報を取るうえでは最高の環境だった。

GPS設置車(逃走車)には舘の車を使った。助手席に小野、後部座席に我妻が座った。運転者の舘はこの日、たまたま胃腸炎にかかり38度を超える熱が出たが実験を優先させられた。助手席の前のダッシュボードには、亀石が契約したココセコムのGPS端末が置かれている。

追尾する追跡車には、西村の車を使用した。運転者は西村、助手席に亀石、後部座席に小林が座った。亀石の手には、ココセコムの契約者専用ページにログインして位置情報を取得する準備を整えたスマートフォンが握られていた。

さっそく亀石のスマホの画面には拘置所の住所、「大阪市都島区友渕町」と表示される。測位誤差の欄には何も表示されなかった。地図を呼び出すと、赤い丸印と十字が重なったマークが表示されている。ちょうど、大阪拘置所のあたりを示していた。

ココセコムの説明書には、誤差が100m程度までであれば赤色、それ以上の誤差になるとグレーでマークが表示されると書いてある。拘置所の駐車場で取得した位置情報は赤い丸印で表示されていたので、誤差の少ないほぼ正確な位置情報であると判断できた。