最近よく聞く「サブスクリプション」という言葉。なんとなくわかっているようで、イマイチ腑に落ちていない人も多いのではないでしょうか。先日『サブスクリプション』(角川新書)を上梓したジャーナリストの雨宮寛二氏が、ソニー、ネットフリックス、マイクロソフトといった有名企業の成功例をもとに、サブスクの「本質」に迫ります。
(取材・文)角川新書編集部
なぜサブスクが勃興したのか
――サブスクリプションと言えば「所有から利用へ」というフレーズを合言葉のように耳にします。このフレーズはどういう意味で、その背景にはどんな要因があるのでしょうか?
雨宮:まずは、消費の縮小という経済的な理由から「所有から利用へ」という流れが生まれていることを押さえる必要があります。
一昔前までは、利用するものを「所有したい」と考えるのは当たり前でした。日本では、高度経済成長期に「一億総中流」という意識が生まれます。生活水準の向上はモノの購買意欲を高め、購入して所有することがステータスにもなった時代です。
しかし、生産年齢人口の減少や格差の拡大によって消費や投資にまわるお金が縮小し続ければ、購買・所有を控えて出費を抑えるようになります。高度経済成長期から続いてきた「製品を販売して収益化する」というビジネスモデルは今、大きな転換点にさしかかっています。製品が計画的に陳腐化していくような仕組みを作り出し、頻繁に新製品を市場に投入するやり方に、コスト感覚に敏感なこれからの消費者はついてきません。
かわりに伸びているのが「サブスクリプション」という、定額もしくは従量制で製品やサービスを提供するビジネスモデルです。それを後押ししているのは、デジタル化の波であり、「所有」から「利用」への消費者ニーズの変化であり、ミレニアル世代以降の新しい価値観です。

――経済的な理由以外にも、サブスクが勃興している要因はあるんでしょうか。
雨宮:はい、サブスクは、消費する側に多くのメリットをもたらしてくれます。私たちは、日々の暮らしのなかでさまざまな選択を迫られますが、サブスクは膨大な情報のなかから最適な選択肢を提案してくれます。
たとえば、最大の映像提供会社であるネットフリックスを考えてみてください。ネトフリは、膨大な作品群の中からユーザーの好みにあった最適な作品を提案し、ユーザーはそれらの作品を、「いちいち購入する」というコストをかけることなく見られます。DVDやブルーレイを単品で購入していたときとは大きな違いです。