「健康」とは何か

薬は対症療法としては一時的に効果があります。薬を続けないかぎり、症状は治まらない。薬をやめられないどころか、副作用の対症療法のために薬が増えていきます。手術も同じ。次に悪いところがあれば手術を繰り返す。しかも身体のゆがみはそのままですから、エラーを起こし続けます。これでは“健康”にはなれません」

薬がなくて苦痛や不具合を感じないことが“健康”である。

「だから薬で一時しのぎをしてはいけない。根本治療ではありません。薬をやめることを何度も言う理由です。胃が痛いという症状が出ていると、原因は肝臓や腎臓などほかの器官のバランスに障害があったり、神経系統に問題があったりします。これを薬で抑えているのが西洋医学」

薬は対症療法にすぎないと説明してくれた。

「自然治癒力が活発になれば白血球の作用が活発になり、身体に侵入した細菌やウィルスをたたく。それが誰の身体にもそなわっていることを忘れないでください。人間の身体はすごいのです。ものすごいです」

股関節を矯正すると、背骨が全部(脊椎)、その上のあるべき場所に乗っていく。顎の関節も、股関節に関係しているそうだ。各臓器も圧迫されることもなく、正常な位置に収まり、身体の機能が正しく動く。血液とリンパの流れがよくなり、免疫力があがる。重要なのは身体の大元である股関節が正常な位置にあることだと納得できた。

次の治療中にH先生は、「僕も腰を痛めた経験があるからわかります。椎間板ヘルニアの手術をしたけれど、さらに悪くなって。20年ぐらい苦しんでいた時に、この治療法に出会って命拾いしました。礎である股関節を矯正しなければ健康にならない。部分的に治しても元が崩れていれば、すぐに悪い位置に戻ってしまうので、つらい症状が続きます。だいだい医者に見離された人がここにきます」

H先生に薬をやめるように言われても、痛みに耐えられるのか不安だった。消炎鎮痛剤をやめて入院した時、病棟の車寄せでタクシーをやっと降りて入口に立った。全身の強い痛みで一歩も足が出せない。通りかかった看護師さんが入院病棟のナースステーションに知らせ、担当の看護師さんが車椅子とともに迎えにきた。あの時の痛みがリウマチの「素の痛み」である。

病院の入り口で、痛みのあまり一歩も足を出せなかった。その痛みがまた来ると思うと恐怖を感じた Photo by iStock

薬を飲まずにリウマチの痛みがなく、自由に動ける身体になりたい。だが薬をやめた時の全身の関節の痛みを想像すると怖い。痛み止めを飲んで楽になりたい衝動に駆られる。気持ちが折れそうになる。

太く短く生きるためには、薬で痛みを封じ込めて仕事をした。痛みを抑えて動ければいいと思っていた。しかしリウマチの痛みは抑えられても、胃や十二指腸が痛くなったり、顔に湿疹がでたり、イライラしたりした。薬の副作用と思われる症状はリウマチの痛みよりつらかった。H先生の説明にも納得した。頭では薬はやめたほうがいいとわかっているのに、今、痛みから逃れたい。頭と身体が、というか思考と本能が別のことを訴えてくる。葛藤しながらも薬を飲まずに頑張った。