レンタルなんもしない人「炎上は楽しい」「無名の34年はつらかった」

【対談】レンタルなんもしない人×東畑開人
現代ビジネス編集部 プロフィール

アートと信頼と観客と

東畑:悟ってますね。

レンタル:悟り?

東畑:あ、本当の悟りではなくて、最近の悟りです(笑)。ビジネス系マインドフルネスでは、選択肢が多い中でシンプルにすることの大事さが語られることがあります。レンタルさんのやっていることは、マインドフルネスにもちょっと親和性があるのかもしれない。専門的にマインドフルネスをやっている人には怒られるかもしれないけど。

レンタル:依頼先に赴く前に、「なんもしないぞ」とマインドフルネスチックなことをしています。漫画『HUNTER×HUNTER』には、オーラを封じる「絶」と呼ばれる状態があるのですが、あれをやっているんです。

頭の中でなにも考えずに、すべてを身投げする気持ち。絶状態にすると、防御力ゼロで危険になるのですが、そうすることによって発現する能力もある。

東畑:日本の臨床心理学にも、伝統的に「絶」状態の重視がありました。西洋のカウンセリングでは、カウンセラーはもっと主体的にやっていたのですが、日本に輸入されるときに「無になることに価値がある」という言説がでてくるんです。

最近は変わってきてはいるのだけど、自分が入れ物になり、そこに相手の自我が入ってくることで、うまいことぐるぐる回りだすのだという考え方ですね。それに近いかもしれない。

レンタル:「絶」はノーガードなので、それで行くことは、相手を信頼していることでもあります。信頼が伝わると、みんな優しくなってくれる。

東畑:依頼者のことを、信頼しているんですか。

レンタル:依頼文面を読んでいくので、ある程度信頼していきます。その上で、毒を盛られたとしても納得できる。あの文面でよくぞこんなことしてくれたなと。自分の審美眼がなかったなと。でもノーガードだと、みんな優しいんですよ。武装していく必要がない。

東畑:ぼくは逆かもしれないな。今日も、イベント開始前にレンタルさんが会場の前にいたのに気づいたんですけど、怖かったんで気づかなかった振りをしました(笑)。安心してないのかな。アートじゃないですね。

レンタル:ガチですね。

東畑:ガチで生きているから、「居るのはつらいよ」になるんだな。

 

レンタル:でも、こうしてネタにしているのはすごいですよね。

東畑:ここに観客の皆さんがいらっしゃるからですよ。釣りバカ日誌のハマちゃんは使えない社員だけど、みんな彼を楽しんでいるんですよね。彼の周りに舞台ができる。『居るのはつらいよ』にも、なにもしない部長が出てくるのですが、彼もエンターテイナーで、なにもしないけれど、彼がいるだけで笑ってしまう。

3〜4人でもいいから、観客がいることが大事なのかもしれない。愚痴を吐くってのもそうですよね。会社の飲み会で愚痴を言うのも、笑えるのがいい。僕らの日々の人間関係は、なんだかんだで互いに観客になりあいながら、エンタメ化している部分があるんでしょうね。

レンタル:最近は人付き合いのマナーとして、自分の話をしてはいけない風潮が強まっていて、舞台が取っ払われてしまった気がします。普通に生きていると、お客さんがいない状態です。

そう考えると、「レンタルなんもしない人」は気軽に上がれる舞台なんじゃないでしょうか。お客さんが欲しい方はぜひ。お問い合わせはDMでなんでも。

東畑:……。

レンタル:……。

(会場笑)

東畑:あぁ、終わりましょうか。

レンタル:そうですね。終わりましょう。

(了)