この社会はガチすぎる…「レンタルなんもしない人」が求められる理由

【対談】レンタルなんもしない人×東畑開人
現代ビジネス編集部 プロフィール

無職はつらいよ

東畑:居るのはつらいよ』では、大学院を卒業し、沖縄のデイケアの現場で心理士として働いた経験を書きました。「あれもやりたい!」「これもやりたい!」と思っていたのに、「とりあえず座っておいて」と言われた。「なんかしなきゃ」といつも焦っていたけれど、実は「なにもしないで居る」ことが本当の仕事だったと気が付いたという話です。

今回のセッションのテーマは、「なんもしなかった人」と、「なんかしたかった人」の対比になっています。さっきから挙動不審だからわかると思いますが、ぼくは「なんかしたい人」なんです。社会性がある(笑)。社会が求めてくるものに対して、応えなければいけないと思いこんで生きているんですね。レンタルさんは、就職していたときから、「なんもしない人」だと思われていたんですか?

レンタル:会社の中にいる人には、「なんもしない」と言われていましたね。

東畑:つらかったんじゃないですか?

レンタル:つらかったです。その時は、人並みになんかしなきゃと思っていて、向けられる視線に敏感になっていた。

会社はなにかしないと給料がもらえない場所です。一方で勤務時間中はつねに給料が発生する状態にある。トイレに行っている間にも給料が発生しています。それがすごく嫌で、怖かった。

「居るだけ」はゼロですらなく、マイナスなのではないかと。この活動を始めるまで、そうしたプレッシャーの中で生きてきました。

東畑:「赤字男」ですよね。レンタルさんは赤字を生きている。「子どもがいるからちゃんとお金を稼げ」「給料泥棒」といった言葉は、よく考えたら赤字はダメだという強いプレッシャーから生まれています。

今の社会はあまりにも赤字に怯えていて、「改革」をしまくっているようにも思えます。でもレンタルさんは「今のところ食えているから」といったスタンスですよね。そこが反社会的で、癒しでもあるなと思いました。

レンタル:自分でも正直、赤字であることについてちゃんと考えると怖い。どんどんお金が減っていくわけです。でも、それは社会人のモードになっているとき。

「レンタルなんもしない人」は、「実験」とか、かっこいい言い方であれば「アート」なのかもしれない。これらは基本的にお金を使う活動で、お金を稼ぐ文脈からは離れます。

そう考えると、今やっていることは別に怖くないですし、おかしいことではないと割り切っています。

 

東畑:レンタルさんは、社会的には無職になるんですか(笑)?

レンタル:えっと……文筆業。本が出ていますからね。

東畑:ぼくには、無職だった時期があります。「居るのはつらいよ」の最後は仕事を辞めて、無職になるところで終わるのですが、そのあとの半年間仕事が見つからず、スピリチュアルヒーラーたちのフィールドワークをしていました(詳細は『野の医者は笑う』(誠信書房)にて)。その時、自分は研究者だと名乗っていましたし、そう思い込むことにしていたのですが、実際は赤字を垂れ流しているんです。

そうすると、だんだんメンタルがやられていくんですよね。謎のスピリチュアルヒーラーに「あなたの本当の自分は人を癒す人なのよ!前世からの宿命なのよ!」と断言されると、「俺はやるぞ!やってやるぞ!」とテンションが上がるんですが、実際は人を癒すどころから無職でやることがないので、漫画喫茶で甲子園物の漫画を読んでいる日々が続きました。

これはかなり堪えました。働かないこと、お金を稼いでいないこと、それがボディーブローのように自分を苦しめていくんです。自滅ですね。赤字は精神状態を悪くします。そう思うと、なぜレンタルさんは飄々とやれているのかな。