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元経済ヤクザが解説「最新版・暴力版図」

アメリカの思惑が列島を揺らす
猫組長(菅原潮) プロフィール

海峡の緊張によって儲かるのは誰か

ホルムズ海峡の緊張によって「儲かった誰か」を改めて考えよう。一つはサウジアラビアだ。

経済制裁とホルムズ海峡封鎖危機の結果、石油生産はイランが1日23万バレル減り史上最低を記録。代わりにサウジアラビアが1日17万バレル増となり、原油価格が高騰することはなかった。イランの市場をサウジが奪ったということは、サウジアラビアの中東内でのプレゼンスと、世界のエネルギー市場でのプレゼンスを高めることに繋がった。

もう一つは、「ホルムズ海峡封鎖危機」によって「有志連合」を呼びかける目的が生まれたことだ。この「有志連合」を対イラン対策のためだけだと考えるのは、早計だと私は考えている。

海上の「チョークポイント」は「ホルムズ海峡」だけではなく、マラッカ海峡(アンダマン海とジャワ海、マレー半島とスマトラ島)、スンダ海峡(インド洋とジャワ海、スマトラ島とジャワ島)、バシー海峡(南シナ海とフィリピン海、台湾島とバタン諸島)などがある。

この海域こそが、中国が「シーレーン」確保のために進出しようとしている接点だ。現在、アメリカは世界のシーレーンを守る強大な軍事費に苦しめられている。ホルムズ海峡用に編成した「有志連合」を、こうした接点にも運用することで軍事費を抑え、自国のプレゼンスを維持しながら対中戦略も行うことができるということが、合理的に導き出されるだろう。「有志連合」の正体は、ユーラシア大陸南部の海の要所を防衛するための同盟ということになる。

 

現在、イランで武力を実行しているのはイラン革命防衛軍だ。石油のビジネスを通じて知り合ったあるイラン人は、イラン国内の過激な武装集団を「SEPA」と呼ぶ。その規模は「集団」と呼ぶよりはるかに強力で、金融機関やメディアなどを所有し、革命防衛軍の中にも深く浸透しているという。

イランの軍隊はシビリアンコントロールが効かない状態だ。現在のイランの最高指導者はアリー・ハーメネイー氏だが、「特に若年層でハーメネイー氏の求心力が極度に低下している」と知人は伝える。

米軍という強大な暴力を目の前にした緊張で、SEPAとイラン若年層が暴発してホルムズ海峡を封鎖すれば、それこそがアメリカの望むところだ。現在、「有志連合」については結成が難航している状態だが、「暴発」によって一転するようになるだろう。

1964年、アメリカは北ベトナム軍に自国の駆逐艦を攻撃させ、北爆開始の動機とした「トンキン湾事件」を誘発した前科がある。中東へのエネルギー依存度が高い日本も、何らかの形での参加を余儀なくされると私は考えているが。