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元経済ヤクザが解説「最新版・暴力版図」

アメリカの思惑が列島を揺らす
猫組長(菅原潮) プロフィール

「産油国」へと脱皮したアメリカの思惑

トランプ政権による経済制裁復活に対して、イランは「ホルムズ海峡の封鎖」を警告した。ホルムズ海峡はイラン南部に位置していて、産油国に囲まれたペルシャ湾と外洋を繋ぐ要所だ。

首を絞めて窒息させることは「チョーク」(choke)と言うが、こうしたシーレーン(海上交通路)の要所は地政学的に「チョークポイント」と呼ばれている。

19年5月、今度はアメリカの国家安全保障問題担当大統領補佐官のジョン・ボルトン氏が、イランに「明確なメッセージを送る」という理由で、空母打撃群とB-52爆撃機4機を配備したと発表。それに対してイラン側はこれまで二度タンカーを攻撃し、アメリカの無人偵察機を撃墜するなど表向きの緊張は高まっている。

注意しなければならないのは、現在のアメリカにとって、ホルムズ海峡がそれほど大きな価値を持っていない点だ。

 

理由は「シェール革命」にある。採掘が困難だったシェール層から石油や天然ガスを採掘する技術がアメリカで開発された。06年からブームが起こり、生産コストは年々低下して、13年ごろまでには火力による発電コストはそれ以前の半分ほどになる。アメリカは元々産油国だったが、「国際競争力を持つ産油国」へ脱皮するほどのコストダウンで、20年にはエネルギー輸出大国になると予測されている。

それによって、エネルギー政策面での中東への依存度はますます低下しているのだ。

にもかかわらずなぜ価値を失いつつあるホルムズ海峡で軍事的緊張を高めるのか――日本など中東に依存する同盟国へのアメリカの善意だと解釈するのは大きな間違いだ。そこにはもっと大きな戦略と思惑があると私は考えている。

注目しなければならいのは、原油価格の推移だ。私自身石油を扱っていたが、安値で安定して供給不安がない状態ではブローカーとして市場に参入するうま味はない。その基準は、1バレル65ドルとなっている。

原油価格の指標になるのWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の原油先物価格の推移を見てみたい。18年5月のJCPOA離脱以降、WTIでの原油価格は下落傾向にあり、現在では1バレル55ドル前後で推移している。ブローカーと産油国の「うま味」の分岐点は違うものの、明らかに現在の原油価格は安すぎるのだ。

価格をコントロールしているのは、もちろんアメリカだ。アメリカ政府と強いパイプを持つ企業が、世界の原油取引所を使って売買を行い、原油価格をコントロールするのを私は目の当たりにしてきた。

現在の原油価格は、「シェール」という武器を持ったアメリカにとって、まだまだ困らないレベルということになる。反対に、価格下落で困るのは、中東やロシアなどの資源大国だ。アメリカは「原油価格」によって、対抗国を「チョーク」しているのが現在の世界だ。