杉並区にあるフィンランド流「学童保育」が大切にしている6つのこと

日本の教育とこんなに違っていた
田中 瑠子 プロフィール

子どもにだって知識と経験がある

その根底には、フィンランドの教育学部で必ず学ぶ「社会構成主義」の考え方があると高野さんは言う。

「社会構成主義とは、人の認識は、人と人との相互作用によって言語的に作られていくという社会学の考え方を指します。人は、一人ひとり異なる知識と経験を持っている。同じ物事でもとらえ方が人によって違うのは、背景にある知識や経験が違うからです。

例えば、誰かが『コーヒーでも飲もうか!』といったとき、その一言から思い描く景色は人によって違います。どんなコーヒーをどんな場所で、どれくらいの時間をかけて飲むのか。相手がイメージする『コーヒーを飲む』絵を確認したり交渉したりして、私たちはやっと、複数人でコーヒーを飲んでいます。

『そんな風に考えるの?』『面白いね!』『でも、それは違うんじゃない?』などとコミュニケーションを取りながら理解や認識が深まっていくというのが、社会構成主義の考え方です。

子どもたちが作品を作ったり、なにか発言をする際に、「どうしてこう考えたの?」と背景に注目する

フィンランドの教育では、この考え方がとても大切にされていて、子どもにも別個の知識と経験があるというベースがあります。大人だから、先生だから、頭ごなしに『正解を教える』ことはしない。子どもが経験し、考えてきたことを尊重するから、先生と子どもたちはフラットな関係性を築ける。お互いが学び合うという姿勢を魅力に感じました」

フィンランドで教育科学を学んだことで、自分が子どものころに感じていた違和感の正体に気づいたと話す高野さん。

「私にも私なりに考えがある!という心の声は、“知識と経験”もちゃんと見てほしい、ということだったのだと腑に落ちました。日本に戻ったら、子どものための自由な学びの場を作ろうと、意志が固まりました」

 

アフタースクール(学童保育)という形態になったのは、自分の影響範囲で作れる教育コミュニティとして、学童保育が最適だったからだ。

「日本の公教育や受験制度をどうこうしようなんて大それたことは考えてもいません。ただ、新しいことをぐんぐん吸収できる子ども時代に、自分自身が認められ受け入れられる原体験を少しでも提供できたらいいと考えているんです」