「乙武義足プロジェクト」が進行している。膝がない、腕がない、歩いた経験がない――乙武洋匡氏はそんな身体の「三重苦」と闘いながら、歩行練習に励んでいる。
義足の開発費用は国から予算が出ていたが、
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クラウドファンディングを始める
1月から3月にかけて大きな動きがあった。クラウドファンディングを始めたのだ。
事の発端は、インターネットテレビ・AbemaTVの人気番組『株式会社ニシノコンサル』にマネジャーの北村が出演したことにある。MCを務めるキングコングの西野亮廣氏やさまざまな業界のプロフェッショナルが経営者などから相談を受け、ビジネスの悩みを解決するというこの番組で、北村は「あの一件以来、乙武のマネジメントの仕方がわからない」と悩みを打ち明けたのだ。「え、そんなに途方にくれてたの?」と申し訳ない気持ちにもなったが、西野さんの提案にはさらに驚かされた。
「そんなにすばらしいプロジェクトをやっているなら、クラウドファンディングをすべきですって」
なんと西野さんは、義足プロジェクトのクラウドファンディングを敢行し、応援してくれる人々から寄付を募る方法を提案してくれたのだ。
「これ、みんな応援したくなりますもん。だから、その“応援したい”という気持ちに受け皿を用意してあげる必要があると思うんですよね」
たしかに、『ワイドナショー』でこのプロジェクトが紹介されて以来、ツイッターなどを通じて、「何か力になりたい」という声がひっきりなしに届いていた。また、文科省から助成金を受けてはいたが、理学療法士として私の練習につきあってくれるウッチーへの報酬など、助成金だけでは賄いきれない負担も大きかった。
アンチの批判がちらつく
しかし、だ。このタイミングで私がクラウドファンディングの支援者を募ることには、ためらいがあった。
「金儲けをしたいのか」
「また調子に乗ってる」
そんなアンチの言葉が聞こえてきそうだ。私への非難だけならまだしも、プロジェクト自体が批判にさらされる可能性もあった。それはやはり、メンバーに申し訳ない気がした。
番組の収録は前年末に行われていた。1月11日のオンエアまでは少し時間があったので、クラウドファンディングの準備には取りかかったが、最終的にやるかやらないかは少し考えさせてほしいと北村に伝え、年末の休暇に入った。
その間ずっと、私は社会問題を解決するためのNPO法人を運営する友人たちの言葉を思い浮かべていた。彼らはしばしばクラウドファンディングを利用するが、異口同音にその効果を語るのだった。
「これだけ多くのお金をいただけたことは本当にありがたい。だけど、それだけじゃない。このクラウドファンディングを通じて、多くの人にこういう社会課題があると知ってもらえたこと、私たちの活動を応援してもらえるようになったことが大きかった」
彼らの言葉は、私を義足プロジェクトに参加する原点に立ち戻らせてくれた。