「手術をすれば、病気が治る」は本当か?日本と海外ではこんなに違う

手術に成功した後、後悔しても遅い…
週刊現代 プロフィール

日本は痔の治療の後進国

たしかに、心房細動を完治させるという観点で見れば、手術を選択したほうがいいのかもしれない。しかし、当然リスクもある。

「脚の付け根など、刺した部位から出血したり、心臓に小さい孔が開いて心臓の周りに血液がたまる、動脈と静脈がつながってしまうといった副作用が報告されています。まれなケースではありますが、左心房と食道がつながってしまうこともあります」(山下氏)

 

しかもこの治療法は、アメリカではなるべく避けるべきものと見なされている。

「米国不整脈学会は、心房細動のリスクのある患者でも、薬で症状や心拍をコントロールできているなら、心筋カテーテルアブレーションを実施するべきではないと注意喚起しています。それどころか、薬で心拍がコントロールされている患者で治療を行うと、利益よりもリスクのほうが大きいとされています」(前出の室井氏)

迷うくらいなら、手術をしないほうがいいケースは身近なところにも潜んでいる。いぼ痔の手術だ。実は、痔は虫歯の次に多い「国民病」だという。平田肛門科医院の平田雅彦氏の話。

「肛門の周りには弾力性に富み、肛門を閉じる役割を果たすクッション部分があります。内痔核(いぼ痔)は、この組織がうっ血したり、出血したりして、肛門内に盛り上がり、垂れ下がって出てきた動静脈瘤の一種です。

Image by iStock

自覚がなくても、10人中7人以上はお尻にいぼ痔があると言われています。悪化すると、いぼ痔が肛門から飛び出して、出血や残便感を伴うようになります」

痔にはいぼ痔、切れ痔、あな痔の3種類あるが、多くの人が抱えているのがいぼ痔だ。そしてこのいぼ痔の治療法で、日本は驚くほどに「後進国」だという。

「先進諸国のなかで日本ほどいぼ痔の手術をする国は他にありません。海外での手術率を見てみると、ドイツが7%、イギリスが5%、アメリカが4%。つまり、9割の患者は、痔で病院に駆け込んでも、手術を受けていません。ドイツの直腸肛門病理学会の教科書では、最初に『痔は手術するものではない』と書かれているほどです。

ところが日本の手術率は、約40%と推測されており、突出しているのです」(平田氏)

いぼ痔の手術は、痔核の根元にある血管を縛ったうえで、痔核を切除する。だが、痔核を切りすぎると、肛門狭窄を引き起こしてしまうことがよくある。すると、肛門が指がやっと一本入るくらいに狭くなり、術後、排便に大きな障害が出てくるのだ。

欧米では手術はあくまでも、他の治療を試しても効果が見られなかった場合に行う、最終手段と見なされている。

「痔は生活習慣病です。食物繊維や発酵食品を多く摂る、運動不足を解消する、椅子に座りっぱなしを避けて、1時間に1回は席を立つなど、生活を改善すれば9割は切らずに治せるのです」(平田氏)

病にかかった部位があれば、切り取ってしまったほうがさっぱりする。そう考えて手術に踏み切る人も多いが、体にメスを入れてから後悔しても、時すでに遅しだ。

『週刊現代』2019年8月10・17日号