営業目標とノルマは違う!? 疲弊する金融業界「営業現場」の実態

「ノルマの呪縛」はどうすれば解ける?
浪川 攻
 

12人の「伝説の支店長」

「君の銀行員人生は短いよ」

周囲にそう言われながらも、十数年にわたって部下に営業目標を課さない「脱・ノルマ」に徹してきた支店長が目指したものは何だったのか。

営業目標期間の最後、顧客に頼んで注文を得ることができたにもかかわらず、わざわざ顧客のもとを訪れて取りやめたもらった支店長の思いは何だったのか。

部下一人ひとりのノートを作り、丹念に記録し続ける叩き上げ支店長は何を見ていたのか。

3ヵ月で不振店を活性化させる「立て直し名人」の支店長はいかにして若手職員たちの心を掌握しているのか。

「尖った支店長」と言われるほどに、なぜ、支店長は本部と戦うのか。

メガバンク、地銀の12人の支店長・支社長がその独自のノウハウを驚くほど包み隠さずに明かした。珠玉の支店経営論ばかりである。それを今回、『ザ・ネクストバンカー 次世代の銀行員のかたち』(講談社現代新書)と題して上梓した。

その結果として、こんな指摘ができる。彼らこそ、現代の「伝説の支店長」たちであり、かつ、デジタル革命の真っただ中にある銀行業界、あるいは金融業界、さらには産業界の将来を展望する際、人間だからこそできる仕事の価値を示している、と。

金融庁は近年、銀行の営業現場の実情に注目を高めている。たとえば、遠藤俊英長官は7月、地域銀行のトップたちとの意見交換の場で「支店長の定義」について、こう呼びかけた。

「本部が掲げる目標達成を遂行する管理者型から、支店を一つの独立体と考えた経営者型へ」

まさにこの新たな定義づけのモデルと言えるのが、拙著で紹介した12人の支店長である(みずほ銀行・三井住友銀行・三菱UFJ銀行・伊予銀行・埼玉りそな銀行・静岡銀行・みちのく銀行)。

自壊を生むノルマ主義からの脱却の道筋もここにあると言えるだろう。