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営業目標とノルマは違う!? 疲弊する金融業界「営業現場」の実態

「ノルマの呪縛」はどうすれば解ける?
 
本部から割り振られた「過剰なノルマ」を、なぜ現場のトップは跳ね返してくれないのか。「営業目標=ノルマではない」というのは、詭弁に過ぎないのではないか。『ザ・ネクストバンカー 次世代の銀行員のかたち』(講談社現代新書/8月21日発売)の著者・浪川攻氏が、金融業界を揺るがすノルマ問題の打開策を探ったーー。

「過剰なノルマ」の背景

近年、金融業界で発生した不祥事の多くのケースで「過剰なノルマ」という問題が見え隠れしている。ノルマ達成へのプレッシャーに追い込まれた果てに営業社員が顧客を欺いて実績を上げるというパターンである。

2018年初頭に明るみになったスルガ銀行の不正事件もそうだったし、最近では日本郵政グループで発生したかんぽ生命の不正販売も、その背景にノルマがもたらすメカニズムがあった。金融業界の一部で自壊現象が始まったように見える。

銀行、証券等々、金融業界は厳しい経営環境に直面している。かつてのような高い経済成長の恩恵はなく、いまや、人口・事業所数の減少が続いてマーケットが縮小している。日銀によるマイナス金利政策の長期化は従来、享受してきた収益基盤を崩壊させた。

そのうえ、フィンテック(金融とIT技術の融合)の波までもが襲い掛かり、それを武器とする新規参入者の脅威は増すばかりである。それらの逆風のなかで、既存プレーヤーは生き残りを賭けた戦いを激化させ続けている。金融の領域は既存の秩序が崩れかけて、仁義なき戦いの場と化したとすら言える。

そこで強まったのがノルマ主義の徹底化にほかならない。「安穏と構えていたら、収益チャンスをライバルに奪取されかねない」という焦燥感に駆られた経営マインドが、営業現場の「稼ぐ力」に対し、過剰なプレッシャーをかけるようになったからだ。

もはや「時代遅れ」

銀行業界ではかねて、「営業目標」の計数を営業現場に課す文化があった。したがって「ノルマ主義」と批判されても、「ノルマではない、営業目標である」と弁明する向きも少なくない。確かに、「営業目標」と「ノルマ」は異なっていてもおかしくない。もし、「営業目標」が文字通り、目標でしかなかったら、それはノルマではない。

しかし、「営業目標」に実績評価体系が組み合わさって、本部や上司による目標達成に向けた檄――往々にしてパラーハラスメント――が飛び交えば、もはや、それは目標ではない。明らかにノルマである。

パワハラはともかく、なぜ、ノルマは好ましくないのか。それが過剰になると、不正行為を誘発するからなのか。もちろん、そういう面は否定できない。だが、理由はそれだけではない。

前述したように、わが国はかなり以前に高度経済成長というステージが終わっている。高度経済成長の時代には需要は増大し続け、供給不足的な社会情勢のなかで供給者側の論理がまかり通った。社会のニーズがそれほど多様化しなかったことも手伝って、同一商品の供給量を確保することに企業は追われた。

しかし、それは「今は昔」の話にすぎない。低成長経済、成熟社会へと移行した現在、需要は後退するとともに、社会は複雑化し、顧客ニーズは格段に多様化してきている。

つまり、半年ごとに営業現場に課される営業目標という仕組みは、供給者側の論理がまかり通った当時には有効であっても、需要が後退し顧客ニーズが多様化した近年には、単に「プロダクト・アウト」という時代遅れの発想でしかない。つまり、社会の間尺に合わない旧式モデルなのだ。

それにもかかわらず、厳しい経営環境の乗り切りのためとばかりに営業目標に基づくノルマ主義が逆に徹底された。それによって生じたのは営業現場の疲弊である。