習近平vsトランプ、米中対立がいよいよ「通貨戦争化」しそうなワケ

人民元安は基本戦術である
唐鎌 大輔 プロフィール

人民元相場を正しく理解していない米国

本欄でも繰り返し論じている点だが、もはや中国の経常黒字国として地位はもはや磐石ではなく、金融危機後、旅行収支赤字に引きずられる格好で徐々にその水準を切り下げてきたという現実がある。

今年4月のIMF世界経済見通しでは2022年には経常赤字国へ転落するとの見通しが示されている。

こうした中、中国政府としての警戒はチャイナショック2.0のような制御の難しい状態に直面し、外貨準備をまとまった幅で費消してしまうことに主眼が置かれていると思われ、制御不能の資本流出を促しかねない大幅な元安を欲しているわけではないと推測される。

8月6日のドル/人民元の基準値が元高方向に設定されたのは、米国側への配慮ではなく自分達の台所事情という側面もあるのではないか。

既にIMFからは中国の外貨準備水準を不十分と評価する尺度も示されており(上図)、今以上に外貨準備を使わされる展開は中国政府にとって脅威である。しかし、矢継ぎ早に米国から追加関税を課される中では「基本戦術としての元安」がある程度、必要になってしまう。

問題はこうした元相場に対する中国政府の複雑な胸中をトランプ政権が正しく理解していないことだろう。

 

無理筋な要求を突きつけながら追加関税を打ち込むトランプ政権のアプローチが続く限り、中国はある程度の元安を容認せざるを得ない事情があるだろう。繰り返しになるが、上で紹介したような商務省の新方針や為替操作国認定に伴って、元安を理由にした追加制裁が検討される恐れは否めない。

巷で評論される通り、両国対立の源泉が次世代技術やこれに伴う軍事上の覇権争いにあるとした場合、経済合理性を超えた次元で摩擦は激化が続く可能性が十分ある。結果として「追加関税⇔元安」という負の循環にいて元相場が新安値を断続的に更新し、そのたびにリスク回避ムードが強まって円高が進むことも同時に予想される。

元より米国の経済・金融情勢が弱気に振れることを背景にドル全面安が進み、その結果として円高が進むと考えてきた筆者のメインシナリオにとっては、その確度を強める材料が中国側から出てきたという理解である。