ソニーとシャープ「驚異の復活」を遂げた二社の意外な共通点

これが日本企業の底力だ
加谷 珪一 プロフィール

戴氏は利益相反を防ぐため、鴻海の取締役を辞任し、排水の陣でシャープの経営に取り組む姿勢を見せた。同氏の仕事ぶりは迅速そのもので、8月のお盆前休み前に社長に就任するも、休み明けには経営基本方針が発表されるという手際の良さだった。

シャープの業績はみるみる回復し、戴氏の社長就任から半年後の2017年3月期には早くも経常黒字を実現し、1年が経過した2017年4~6月期には最終黒字を達成、わずか1年4カ月で東証1部への復帰に成功した。しかも、この間に社員の給与(ボーナス含む)を17%も増やしている。

まさに100点満点の復活劇だったが、戴氏は何か特別な奇策を繰り出したわけではない。経営者としてやるべきことを淡々とこなしたというのが実態だ。

 

つまらないプライドを捨てるだけ

戴氏が行ったのは、ずさんだった取引先との契約見直しである。当時のシャープは原材料の確保を優先するあまり、割高な長期契約を締結するケースが多く、これが収益悪化の原因となっていた。過剰な設備投資を実施してしまったことから、途中で引き返すことができず、何としても原材料を確保するため不利な契約を行い、さらに収益が低下するという悪循環だったと考えられる。

戴氏は各取引先と個別に交渉を行い、契約内容を変更することで、あっという間に利益を増やしている。

社長室の椅子に座り、決済に上がってくる書類をチェックするだけでも大きな成果があった。情報システムを更新するにあたって、汎用機(メインフレーム)を使った旧式のシステムに、20年の長期契約で30億円もの金額を払っていたケースもあったという。

戴氏が行った施策は、経営者としてはごく初歩的なものばかりであり、高学歴者も多かったシャープ経営陣が状況を理解できないはずはなかったが、現実にはメチャクチャな経営が行われていた(これは東芝にも通じる話といってよいだろう)。

シャープはもともとアイデア商品を得意とするメーカーであり、そこが同社の魅力でもあり競争力の源泉でもあった。同社が躍進するきっかけとなったのは、早川式繰出鉛筆(いわゆるシャープペンシル)だし、同社の主力商品のひとつとなったプラズマクラスターもユニークな存在だ。

ところが2000年代のシャープは、重厚長大産業に憧れ、採算を度外視して液晶の過剰投資に邁進してしまった。経営陣が創業家からサラリーマン集団にシフトし、財界での序列など、つまらないプライドを優先するようなった可能性が高い。甘い契約もこうした土壌から発生したと見てよいだろう。

ソニーもシャープも、もともと強固なビジネス基盤を持っており、商売の基本に立ち返ることで、容易に業績を回復できた。日本メーカーに求められているのは、こうした地道な努力であり、これこそが本当の「日本の底力」である。