実は日本人の死因第3位「老衰で死ぬ」とはどういうことか

どこも悪くなかったのに…の研究
週刊現代 プロフィール

実は前出の厚労省の人口動態統計を見ると、その頃から年間5万人以上の日本人が老衰で亡くなっている。つまり、50代で老衰で亡くなる人もいたということだ。だが、いまの時代に50代の人が衰弱死しても、老衰という診断が下されることはまずない。

「老衰と判断するにはあまりに若すぎる」という、医者の主観的な判断が働くからだ。こう考えると、やはり老衰とはどこまでいっても「なんとなく」で診断される、漠然とした概念なのだ。

 

もっとも、前述のように老衰を望む人が多いのなら、老衰死が増えている現状は歓迎すべきではないか?

「そうとも言い切れないだろう」と、前出の榎木氏は語る。

「老衰と診断された死亡患者も、実際に病理解剖を行えば心筋梗塞や脳梗塞など、他の死因がかなりの高確率で判明するもの。ですが、現実問題としてそこまでの時間とコストをかけて死因を特定するようなことはしないでしょう。

遺されたご遺族も『がんや心筋梗塞で死んだとするよりも、老衰で死んだといったほうが外聞がいい』と、意図的に老衰を選択することも多々あります。

さらに老衰という名のもとに、病院側も患者への虐待や医療ミスを隠蔽することだって起こりうる。老衰が都合よく隠れ蓑に使われ、悪用されてしまうのです。そう考えてみると、手放しに素晴らしい亡くなり方だとも言いきれないことがわかります」

性格まで変わった

ではその一方で、在宅で老衰死を迎える人は一体どんな経過を辿るのだろうか。はたしてそれは多くの人が夢想するような「幸せな逝き方」なのだろうか。

冒頭の幸助さんのエピソードに戻ろう。慎太郎さんは父が自宅で息を引き取るまでの3週間を、克明に振り返る。

「父がご飯を食べようとしなくなってからも、しばらくは『お願いだからちゃんと食べてくれ』と、無理やり食事を摂らせていたんです。父も明らかに気が進まないながらも『わかったよ』と、食卓に座ってくれた。これまで通りの量、というわけにはいきませんでしたが、一日三食は欠かしませんでした。

それでも父は日を追うごとに痩せ細っていきました。165cm、55kgだった体は、たった1週間で50kg未満にまで体重が落ち込んでしまった。時間がかかってでも、食事は口にしている。嘔吐して戻したりすることも一切ありませんでした。

それなのに、なんで体重が落ち続けるんだろうと。父の様子を見ていると、カロリーを摂っても栄養がちゃんと吸収されず、スルスルと抜け落ちていくようでした」

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実は、これはまさに老衰で亡くなる高齢者に多くみられる典型的な現象。年齢を重ねるにつれて、体内の細胞数はみるみる減少していく。それが原因で栄養素を吸収する小腸の組織や筋肉が萎縮してしまうのだ。

小腸の内側はヒダ状になっており、食事を摂った際、そこから効率的に養分を運べる仕組みになっている。だが、老衰の状態になるとヒダが収縮してしまう。せっかく摂った食事を体内に上手く取り込むことができず、体重減少に歯止めがかからなくなる。

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