実は日本人の死因第3位「老衰で死ぬ」とはどういうことか

どこも悪くなかったのに…の研究
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慎太郎さんが語るように、一般的に老衰は加齢によって体が機能しなくなり、ゆっくり死を迎えるというイメージがある。その点で、心疾患などが突発的に起きたことで24時間以内に死亡する突然死とは違う。

 

老衰に、医学的な定義はあるのだろうか。厚労省が刊行している「死亡診断書記入マニュアル」を紐解いてみると、老衰は「高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合のみ用い」る死因だと書かれている。この時点で、すでに曖昧で掴みどころがない。老衰の定義など、あってないようなものなのだ。

「老衰の基準というのは、死亡診断書を書く医師によってまちまちでブレがあるんです。医者の間でさえも、共通の認識や見解が出来ているわけではありません。

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いまの日本人の平均寿命は、男性が81・09歳、女性が87・26歳。その寿命と照らし合わせて、80歳後半を過ぎて亡くなった高齢者には老衰という診断をつける医者が多いのが実情です。でも、何歳以上ならば老衰だと言える明確なルールは存在しません」(病理専門医の榎木英介氏)

50代で老衰もあった

老衰が昨年の人口動態統計で死因の第3位に浮上したのには、医学界の大きな方針転換がある。

'17年に日本呼吸器学会が出した「成人肺炎診療ガイドライン」。ここで初めて、患者に対して踏み込んだ治療方針が示された。

その中では、終末期の患者には「個人の意思やQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を考慮した治療・ケア」が行われるべきだとハッキリ書かれている。つまり、患者によっては積極的な治療を実施せず、無理のない最期を迎えてもらおうという内容が盛り込まれたのだ。

これは「病を治すこと」を至上命題として掲げている医学界としては革命的なこと。実際、ガイドラインに後押しされるように、誤嚥性肺炎で亡くなった患者の死亡診断書にも「肺炎」ではなく、「老衰」と書く医者が急激に増えている。

「私自身を含め、これまでの日本の医学界では、とにかく手術や薬でなんでも治すことに重きが置かれてきました。

医療こそが人間を助け、生かしてくれるものだという価値観を信じて疑わなかったんです。でも、どんな生き物であってもいずれは免疫力が尽きて朽ちていくもの。現代の多死社会の中で、人生の終着点として老衰が見直されているのは、ごくごく自然な成り行きといえます」(世田谷区立特別養護老人ホームの石飛幸三医師)

ここでひとつの疑問が生まれてくる。たとえば第二次世界大戦直後の'47年、日本人の平均寿命は男性で50・06歳、女性で53・96歳だった。平均寿命がいまよりも30歳以上短かった当時にも、老衰という概念はあったのだろうか。

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