ニューヨーク市に位置するコロンビア大(Photo by iStock)

第二次世界大戦の「記憶」は、国によってまったく違うという現実

「大東亜戦争」「抗日戦争」「非常事態」

「戦争の記憶」をめぐる争いに、どうしたら終止符を打つことができるのか。アメリカにおける日本近現代史研究の第一人者であるグラック教授が、世界から集まったエリート学生たちと徹底討論した。

キャロル・グラック
'41年、アメリカ・ニュージャージー州生まれ。専門は日本近現代史・現代国際関係・歴史学と記憶。'96年、アジア学会会長。'06年、旭日中綬章受章。著書に『歴史で考える』(岩波書店)他

敵対的議論を乗り越える

「第二次世界大戦が終結してから75年近くも経つのに、あの戦争をどう見るかは今も熾烈な政治問題となっています。歴史をどう見るかについて、唯一無二の視点というのはあり得ません」

こう語るのは、アメリカの歴史学者であるキャロル・グラック教授(77歳)だ。日本近現代史を専門とし、45年間、米国屈指の名門、コロンビア大学で教鞭を執る。アジアで歴史問題が表面化するたびにメディアや学会で意見を求められ明快かつ率直な物言いで信頼を集めてきた。

 

そのグラック教授が、ニューズウィーク日本版主催の企画として、'17年11月~'18年2月、コロンビア大学にて全4回にわたって日本や韓国、中国、インドネシア、カナダ、アメリカ各地から集まった多様な学生たちと、第二次世界大戦の「歴史」と「記憶」について話し合う特別講義を行った。

「学生たちは、育った環境によって、第二次世界大戦について大きく異なる見方をもっていました。しかし学生たちは、ときに意見が異なる場合でも、互いの見方に耳を傾け尊重しようとしていました。これこそが、自分たちが生み出したのではなく、上の世代から受け継がれた『記憶の政治』をめぐる敵対的な議論を乗り越えるための第一歩なのでしょう」

今回は『戦争の記憶 コロンビア大学特別講義―学生との対話―』(講談社現代新書)に収録された、グラック教授と学生たちとの対話を抜粋して紹介しよう。