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ヒトの「空想力」を育てる、小説・漫画・地図、おススメの10作品

作家の長野まゆみさんに聞いた

原点はカムパネルラ

これまでの読書歴をふり返ると、子どもの頃に読んだ作品が後々まで自分の中に残っていることに気がつきました。ですので、今回は本に出会ってから、最初の10年くらいで触れた作品を中心に選んでいます。

小学校1年生の時、家に「昭和文学全集」があることに気がつきました。いくつか手に取ってみたんですけど、その頃に出された本は旧漢字や旧字体が残されていて、当時の私では読むのが難しかった。しかし、その中で比較的余白やひらがなが多くて、読めそうだったのが『宮沢賢治』でした。

 

賢治の作品の中で、特に私の目に留まったのは、『銀河鉄道の夜』でした。当時は宇宙ブームで、銀河や惑星といった言葉にはよく反応していたんですね。旧字体のところはもちろん読めないので、親に聞いたり辞書を引いたりして読み進めましたが、やがて作品の世界に没入していきました。

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日本人ではない名前の少年たちが、どこかの見知らぬ町で暮らしている。私たちの世代は、テレビの影響により登場人物がカタカナ名でも、舞台が外国でも、驚くことはありませんが、宮沢賢治は私の祖父の世代ですから、当時としては異質な作品だったでしょう。

私自身はカムパネルラの〈恵まれた身でありつつとことん孤独な雰囲気〉に魅了され、それからは少年ものの作品ばかりを読むようになりました。作家となった初期には私も少年ものを多く執筆しましたが、その原点はカムパネルラでした。

外国への憧れや興味も常にあり、家にあった「世界文化シリーズ」に夢中でした。このシリーズは、写真と記事で構成されており、イタリアやドイツなどさまざまな国がある中、特に偏愛していたのが『フランス』です。

川や橋の名前、詳細な地理、当時のフランスの有名人などはすべてここから覚えました。風景写真もたくさん掲載されていて、フランスがより立体感をもって伝わってきました。

また、岡本太郎など著名人によるエッセイや紀行文も充実していて、情報を知るのみではない楽しさもたくさんありました。私にとってのフランス像は、この一冊で形成されたと言っても過言ではありません。