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綿矢りさの新境地、女同士の恋愛と性愛『生のみ生のままで』

著者にインタビュー

7年の空白を経て再会したふたり

―『生のみ生のままで』は、女性同士の恋愛と性愛を鮮烈に描いた長編小説です。“女性同士”を書こうと思われたきっかけは何でしたか?

まずタイトルを思いつきました。「生のまま」という言葉は、ちょうどその頃読んでいたチベット仏教の仏典『チベット死者の書』に出てきて、それに影響されました。

このタイトルで、二人がナチュラルに向き合う恋愛小説を書きたいなと。それには女性同士がいいだろうと思ったのです。

 

以前から同性同士の恋愛を書いてみたいという気持ちがあったんです。谷崎潤一郎や三島由紀夫が筆を尽くして描いてきた分野に自分も挑戦したいとも思ったし、『ひらいて』という小説で女・女・男の三角関係を書いた時に、女性同士の恋愛にはもっと書く余地があるなとも感じました。

今回、書くに当たっては、二人の精神的なつながりとともに、髪や声、体の細部までを書きたいと思いました。

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―主人公の逢衣と彩夏が出会った時、二人には男性の恋人がいました。にもかかわらず、惹かれあっていく。恋に落ちることの不可思議さ、抗えなさが丁寧に綴られます。

当時の二人には、性格も外見もいい、最強レベルの彼氏がいた。素敵な彼氏がいるのに否応なく惹きつけられていく、という過程を書きたかったからそうしたのですが、難しくて、何度も書き直しましたね。

また二人は、同級生でも同僚でもなく、言ってみれば薄い関係です。そういう二人に何が起きたら、心が動くだろうかとも考えました。

―二人の蜜月は、あるトラブルで引き裂かれます。7年の空白を経て再会し、新たな関係を築いていく。恋愛を長い年月にわたって描きました。

この小説では長いスパンで二人の付き合いを書きたいと思いました。20代半ばから30代半ばは、結婚や出産を経験する人もいるなど、女性にとって変化の大きい時期です。

一方で、最近は自由に、多様になってきているとも感じます。恋人がいないまま過ごす人もいるし、逢衣と彩夏のように仕事に邁進する人もいる。それぞれの時間の中で、若い頃の燃え上がるような恋愛感情が続くのだろうかと、実験的な気持ちで書いていました。

もう一つ思ったのは、それぞれの時間をどう過ごしているかは、結局は本人にしか分からないなということ。逢衣のように本心を周囲に隠しながら生活している人もいるだろうし、私も友人のことを、すべて知っているわけではありません。