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由紀さおり『夜明けのスキャット』は、なぜかくも人を感動させたのか

時代の空気に合っていた

一度聴いたら耳を離れないイントロ、そして透き通るように歌い上げられるスキャット。名曲ばかりの昭和歌謡界にあって、この曲は異質な魅力を持っていた。

歌詞がないという衝撃

山上 『夜明けのスキャット』が発売されたのは、'69年3月です。

当時、駆け出しの作詞家だった僕の名前を、世間の皆さんに知ってもらえたありがたい曲ですが、制作中はとにかく苦労の連続でした。それでも、50年経ったいまでも聴かれる名曲になったのは、素晴らしいことだと思います。

山上 路夫(やまがみ・みちお)
'36年、東京都生まれ。作詞家。赤い鳥『翼をください』、小柳ルミ子『瀬戸の花嫁』、野口五郎『私鉄沿線』など、昭和を代表する楽曲の作詞を担当

渋谷 由紀さおりさんのデビュー曲にして、累計150万枚を超えるヒット曲になりましたからね。僕は当時、この曲の作曲を担当していたいずみたくさんの事務所で、仕事を手伝っていました。その縁で、編曲を担当しました。

 

 僕にとって『夜明けのスキャット』は、深夜ラジオのイメージが強いですね。僕は発売された1ヵ月後に中学に入学しましたが、夜更かしして聴いていた深夜のラジオから、『夜明けのスキャット』が流れていたのをよく覚えています。

1番の歌詞に日本語が一切登場しない。「ルルル」「ラララ」と、音だけで歌われるスキャットの部分は、とてもインパクトがありました。

渋谷 毅(しぶや・たけし)
'39年、東京都生まれ。ジャズピアニスト、作曲家、編曲家。坂本九『見上げてごらん夜の星を』の編曲や、由紀さおり『生きがい』の作曲などを担当

渋谷 僕も、編曲する前に原曲を聴いたときは、「なんだこりゃ」って思いましたよ。

 当時は、スキャットという言葉自体、まだ知られていませんでしたからね。