フランスでも衰退? 哲学教育の危機

変わるカリキュラムとバカロレア
西山 雄二 プロフィール

哲学教育の現場はどうなっているのか

筆者はこれまでフランスの高校で何度か授業見学をおこなったことがある。2018年秋には、5週間ほど、パリのエレーヌ・ブーシェ高校を見学させていただいた。

哲学の授業に教科書はなく、授業運営は各教師に任されている。必要な引用文の抜粋だけは配布されるが、教師は基本的に準備した内容を口頭で説明する。まるで大学の講義さながら、学生らは教師の話をすべてノートかパソコンで転写する。教師がときおり質問を投げかけると、学生らは自発的に手を上げて答えが返ってくるし、教師の話を遮って積極的に質問する学生もいる。

 

日本人には難解に映る哲学の授業が成功しているように思えるが、しかし、現場の教師からは不安の声を頻繁に耳にする。フランスでも文系離れが止まらないのだ。

エレーヌ・ブーシェ高校では、理系7クラス、経済社会系5クラスに対して、文系はわずか1クラスである。哲学教師は2年生向けに文系進学のキャンペーンを企画するなど、具体的な対策に乗り出している。

高等教育省の統計によれば、1995年度に文系を選択した高校生は71,460人だったが、2016年度は50,974人にまで落ち込んでいる。理系は139,031人から173,217人へ、経済社会系は76,555人から102,887人へと増加していることから、文系の不人気が顕著であることがわかる。

この間、高校生の数が1.3倍に増加していることを踏まえると、高校生の総数(工業系、専門系も含む)に対する文系の割合は、実に14.5%から8.1%に激減したことになる。

優秀な学生は、哲学や文学を愛好していても、将来の可能性を考えて、理系や経済社会系を選択する傾向がある。文系ではバカロレア試験で点数を稼ぎにくいという悪評が流布しているからかもしれない。

ともかく、文系クラスは、成績が芳しくない多数の学生と、文系の進路に覚悟を決めた少数の学生で構成されているようだ。

マクロン政権下での高等教育改革

2018年に史上最年少の大統領としてエマニュエル・マクロンが当選してから、数々の改革が進められているが、高等教育もそのひとつである。

2018年2月、数ヶ月間の議論の末、国民教育相からバカロレア改革案が提示された。日本では考えられないスピードだが、実施は2021年度からである。

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