別れるなら君も子供も…DV夫から逃げる妻を襲う「嫡出否認」の不条理

120年前の法律に苦しめられる女性たち
松岡 久蔵 プロフィール

今回の報告書について、作花弁護士はこう解説する。

「『父親が確定しないと子供が不利になる』という決めつけを前提とする考え方そのものに、家父長制の価値観を維持しようとする意志が感じられます。シングルファーザーやシングルマザーが珍しくなくなり、生き方としても認められつつある時代に、父親だけが子供の社会的な利益を確保できるとするのは、むしろ偏った考え方ではないでしょうか?

これまで家族関連の法制度にかかわってきた自民党の議員は、男性が圧倒的に多く、『大事なことは男が決める』という家父長制が色濃く残る地方の出身者も多い。若手でさえ有力議員は2世、3世が多いため、古典的な家族制度に疑いをもつ機会が少ないことも影響しているでしょう。

しかし、家族法が制定されてからまる1世紀以上経っている上、A子さんのように実害を受けている女性も大勢いるわけですから、戸籍制度の必要性そのものを含めて議論しない限り、同じ過ちを繰り返すことになります」

 

時代遅れの制度を変えるのが急務

法務省によると、無戸籍者は今年6月10日時点で国内に約830人おり、その約8割が「(前)夫の嫡出推定を避けるために、母親が出生届を提出しなかった」ことが理由で無戸籍になっているという。夫との関係を解消できず、子供の戸籍を作れないことによって、不利益を被っている人々が大勢いるのだ。

そもそも日本の戸籍制度には、住んだこともない土地が「本籍地」として登録されるなど、不合理な部分が少なくない。徴兵制が存在したり、農漁村地域の安定的管理が求められたりした昔の日本では合理的だったのかもしれないが、今となっては時代遅れというほかない。

120年もの時を経て、ひとりひとりが自由かつ幸福に生きるための制度設計に、ようやく変えることができるのか。早ければ10月の臨時国会に提出される改正法案に注目したい。