別れるなら君も子供も…DV夫から逃げる妻を襲う「嫡出否認」の不条理

120年前の法律に苦しめられる女性たち
松岡 久蔵 プロフィール

この審議会では、夫にしか認められていない嫡出否認の提訴権を母親や子にも広げるかが主要な論点となる。A子さんの代理人を務める作花知志弁護士に話を聞いた。

「実は昨年ごろから自民党が党の勉強会で取り上げるなど、嫡出否認規定の見直しは意識されていて、問題意識が広がっていることは実感していました。家族法は120年以上昔の1898年に制定され、そこからずっと改正されていませんから、女性の社会進出をうたう自民党からすれば、時代に合わせて変えていく必要は感じ取っていたのだと思います。

 

報道によると、法制審議会は改正法案について最長で2022年まで議論するようですが、司法の側も、上告してからまだ何の返事もよこしていません。ただ、これはポジティブな反応と見ています。立法と司法の間で、お互いどちらが判断を下すかを様子見している節があるものの、何らかの改正がなされる徴候だからです。

親子関係に関する法律が変わるということは、相続などほかの法制度にも多大な影響を与えますから、時間がかかるのはむしろ当然といえます。国は可能な限り現行規定に違憲判決を下されたくないわけですから、法律そのものを国会で変えるほうを選ぶのではないかと考えています」

根強く残る「家父長制的価値観」

今回の動きを受けて、法制審が7月末に出した親子制度についての研究会の報告書によれば、嫡出否認権を母親や子供にも認める必要性を前向きに検討する姿勢は見られたものの、前の夫と離婚した後300日以内に生まれた子のうち、「出生時までに母が再婚していた場合」についてのみ嫡出否認権を認めるという方向性で議論が進められた。

しかしこの条件では、A子さんのように、女性が離婚できないまま300日以内に別の男性との間に子供を授かった場合、結果は現行制度と変わらないということになる。

報告書の中では、理由として「嫡出推定の例外を広く認めることは,本来,嫡出推定規定により前夫の子と推定され,早期に父子関係が確定されたはずの子を父の定まらない不安定な地位に置くことにもなること」が挙げられている。