がんを発見できない医師…「診断ミス」で殺されかけた人々

薬の量を間違えて吐血…
週刊現代 プロフィール

同じような実例は他にもある。さいたま市の斎藤久美子さん(66歳)は3年前、市の検診で大腸がん検査を受けた。その際、直腸下部に炎症があっただけなのに大腸がんと誤診された。結果、直腸を切断され永久人工肛門まで取り付けられてしまった。現在でも彼女は人工肛門の不便な生活を余儀なくされている。

一方、がん以外の病気に目を転じても、診断ミスのオンパレードだ。たとえば、がんに続いて国内の死因2位となっている心疾患。その中で最も罹患者が多い心筋梗塞も、ご多分に漏れない。

 

実は、心筋梗塞の患者を医者が胃腸炎だと誤診してしまうケースが頻発している。

心筋梗塞の予兆のひとつに、放散痛というみぞおちや背中の痛みが15分以上にわたって続く症状がある。胸部と離れているので無関係だと判断されがちだが、この痛みは心筋梗塞の重要なサインでもある。

お腹の周りが痛むので患者は消化器系の医者にかかりがちだが、消化器内科の医者は心筋梗塞の可能性を見逃してしまう。下痢や下血がないので胃腸炎と診断し、痛み止めだけを処方しておしまい。その結果、患者は突然心筋梗塞を発症し、倒れてしまう。

本来ならば他科の領域でも、様々な疾患の可能性を想定しなければならない。それにもかかわらず、安直に患者を診断する医者が多いのだ。

薬の量を間違えて吐血

医者の失態は診断ミスだけに留まらない。投薬ミスによって患者を死に追いやることもある。

6年前、夫の良治さん(享年61)をステロイドの過剰投与によって喪った武田峰子さん(58歳)はこう語る。

「あれは12月のことでした。突然、夫がのどの痛みを訴え地域の総合病院にある耳鼻科に行ったんです。診断は咽頭炎。先生からは痛みを抑えるため、ステロイド剤が処方されました。その日は薬を手に自宅へ帰った。それから数日、先生の指示に従ってステロイド剤を服用していたんです」

良治さんに異変が起きたのは6日目のことだった。自宅のリビングで、大量の吐血をしたのだ。倒れ込みながら「うぅぅ」と呻く良治さんの前には、血の海ができていた。

突然のことに、峰子さんはパニックに陥る。急いでタクシーを呼んで、件の病院に駆け込んだ。だが、担当医は「薬の副作用ですよ。ステロイドは強力だから吐血する人もいるんです」とにべもない。だが、良治さんの苦しみ方は尋常ではない。

峰子さんが「お願いですから、ちゃんと診断してください」と食い下がるも、医者は面倒くさそうに同じ説明を繰り返すだけ。性懲りもなくステロイドを処方され、強引に家に帰された。

「その後、吐血は治まりましたが、明らかに夫は憔悴していました。翌朝のことです。

隣で寝ていた夫の血圧が測定不能になるほど低下し、完全に意識が失われていました。焦って救急車を呼び、最寄りの救命救急センターへと向かいました。そこで急性出血性胃潰瘍と診断され、胃の緊急摘出手術となった。でも、もう手遅れで。腸からも出血して、手の施しようがなくなってしまいました。

苦しみながら夫は死んでいったんです。

夫の死因を調べたら、ステロイドの投与量が間違っていたことが判明した。適正量を遥かに超えた量を処方されていたんです。夫の胃と腸はボロボロにされていました。夫が亡くなってから、絶対に許せないと病院を相手取って裁判を起こしました。

結果は勝訴でしたが、虚しさも募りました。いくら裁判で勝ったとしても、亡くなった夫の命は戻ってきません」

医者もひとりの人間であって、万能ではない。もちろん間違いだって犯すだろう。ただ、あまりにお粗末なミスで患者の命が脅かされているのもまた、事実なのだ。

『週刊現代』2019年7月27日号より