自衛隊PKO派遣、日本が重ねてきた国際社会への「詐欺」を明かそう

そして会議場は凍りついた…
伊勢崎 賢治 プロフィール

しかし、国連の外交の「政治」は、「軍事」の意思とは裏腹に、日本の足抜けに対して遺憾表明を出さず、シラーと流した。

当たり前だ。国連の「政治」が、日本のためにいつも用意して、幸か不幸か、今まで事なきに済んできた「一番安全な時期に、一番安全な場所で、一番安全な任務」が、「事件」によって一瞬に崩壊したのだ。

自衛隊があのまま駐留を続け、もし自衛隊を巻き込んだ事件が起き、国連地位協定で国連が約束した「派兵国の国内法廷による責任ある事犯の起訴」を”全く”履行できない国の部隊が、PKOに紛れ込んでいたことを、もし南スーダン政府が知ることになったら……。

さすがに国連の「政治」も、こんな外交リスクはとれない。

護憲派の欺瞞

忘れてならないのは、南スーダンPKOへの自衛隊派遣を決定し実行したのは、前掲の現代ビジネスの寄稿でも何度も書いたように、旧民主党政権だったということだ。

すでに述べたように1999年の国連事務総長告知以来、日本は部隊派遣の資格を失っている。だから止めろと、僕は、当時の政権の中枢にいた護憲派議員に説いて回ったのだ。もう名前を公表したいくらいだが、その時、彼らが僕に何を言ったか?

「伊勢崎さん。あなたは全く正しい。でも、護憲派の議員として、改憲につながる憲法論議を発議することはできない」だった。

すべては、「軍事組織を持つのをやめるから軍事犯罪を犯す心配もやめる」とする9条2項があるからなのだ。日本の法体系が軍事犯罪を裁く想定をすることになったら、それを犯すのは軍事組織つまり戦力だから、戦力の不保持を謳う9条2項に、もはやどんな解釈改憲の余地も許さない矛盾を呈してしまう。

日本の「無法」は、9条2項に帰結する問題なのだ。

護憲派が権力を握っても9条2項の解釈が国際法の遵守に引き起こす問題を自ら是正することはない。なぜなら、それが護憲派だから、だ。

「その問題がはっきりしたおかげで自衛隊を海外に出さなくて済むから今のままでもいいじゃなか」

こんな声が、護憲派から聞こえてくる。

まったく自覚が足りない。

本来、憲法は、権力を縛るものであるはずだ。「戦争犯罪をおかす自覚のない軍事組織を他国に、それも相手から裁判権を奪って、しゃあしゃあと派遣する蛮行」を、世界の誰も不謹慎すぎてやらない「詐欺」を、権力に、護憲派のそれも含めて、許してきたのだ。憲法9条は憲法の基本的な機能を、とうの昔に、喪失している。

9条の護憲は、国際人道法を基調とする国際正義の上で、あり得ない政治選択である。