自衛隊PKO派遣、日本が重ねてきた国際社会への「詐欺」を明かそう

そして会議場は凍りついた…
伊勢崎 賢治 プロフィール

日本の話をしたら、会場全体が凍りついた

ソウルでの国連PKOのハイレベル実務者会議で、僕が頼まれた講演の内容は、PKO部隊がその行動の中で戦争犯罪やその他の軍事的な過失を犯した場合、”少なくとも”これ以上「嫌われない」ために、国連地位協定を運用するPKO統合司令部は何に留意するべきか。国連PKOが果たすべき現地社会への法的なアカウンタビリティとは何か、であった。

事犯の被害者に金銭的な補償をすればいいという話ではない。PKOの昔の”救世主”的なイメージは、もはや存在しないのだ。PKOは”嫌われる”存在なのだ。

当然、日本人の発言者として、日本のことを話題にしなければならなくなる。

国際社会が「戦争犯罪」と呼称する国際人道法の重大違反に対する、日本における国内法の整備は今のところ皆無である。

2004年、遅まきながら加入した国際人道法の一つであるジュネーブ諸条約追加議定書に対応するため、同年「国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律( https://www.mod.go.jp/j/presiding/law/yujihousei/004a.html )」を成立させたが、その中身は、文化財の破壊や捕虜の輸送を妨害するなど軽度な罪への処罰だけで、肝心の重大な殺傷と破壊つまり「戦争犯罪」に関するものが一切ない。

さらに、自衛隊法の根幹は、自衛隊員が主語の「武器の使用」であり、首相を頂点とする国家の指揮命令系統を起訴する法体系がない。自衛隊員個人の過失にするしかない。

しかも、日本の刑法は「国外犯規定」があり、自衛隊員に限らず日本人が海外で犯す業務上過失は管轄外である。最悪、自衛隊員個人が故意犯として、国家の命令行動の責任をとらされる。つまり「撃ったら自己責任」なのだ。(「安保法制」にも、国外犯処罰規定がないことは、現安倍政権も認めている:http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/189/touh/t189198.htm

つまり、日本は、戦争犯罪を起訴する法体系も、そして自衛隊員個人の海外での過失を起訴する法体系も、何も持ち合わせていない。この実務者会議での講演中に、僕がこれを言った時の、20ヵ国の政府代表団の反応っていったら……会場全体が、凍りついた。

軍事組織が戦争犯罪を想定外にする。こんなことは、地球上に、あってはならないことなのだ。今でもこの瞬間を思い出すたびに、背筋が寒くなる。僕は、日本という国の名誉を貶めてしまったのではないかと。

次に政府代表団の目は、対面に座る国連本部PKO局軍事部に向かった。……彼らは一様に下を見ていた。

会議のあと、そのPKO局の幹部の一人が僕に寄ってきて、静かに握手を求めてきた。

残念ながら、PKOの軍事部門に関する限り、こういう会議では、日本政府と自衛隊関係者に、発言できる空間は、もうない。これが、この会議に、日本政府の関係者が、会場後方に用意された「末席」も含めて、人っ子一人いなかった状況の背景である。各国は、本国の代表者の他にも、在ソウル大使館員を含むチームで参加していたのに。

 

自衛隊の南スーダン撤退は「恥ずべき行為」

付け加えるが、この会議では、「南スーダンの事件(*)」直後の自衛隊の部隊撤退は、国連PKO局の軍事部門の首脳によって、明確に「恥ずべき行為」と見なされていた。

(*)南スーダンの事件:2016年7月、南スーダンの首都ジュバで、国連平和維持活動に派遣された自衛隊部隊の宿営地を挟んで、政府軍と反政府軍の戦闘が行われ、宿営地にも銃弾が飛び込んでいた。にもかかわらず防衛省は当時の日報を隠蔽していたことが発覚、大問題となった。

日本政府が「任務完了」と何と言おうと、だ。「事件」による一番の被害者は現地住民なのだ。自衛隊が送られたPKOの主要任務は「住民の保護」なのだ。だから国連安保理は、「事件」を受けて、PKO部隊の増兵と、任務遂行に向けて更なる国連加盟国の結束を要請したのだ。

自衛隊撤退は「恥ずべき足抜け」に決まっている。