自衛隊PKO派遣、日本が重ねてきた国際社会への「詐欺」を明かそう

そして会議場は凍りついた…
伊勢崎 賢治 プロフィール

最近の5年間ではすでに200名以上が敵対勢力との「交戦中」に死んでおり、これは国連が創設されて以来の5年間の区切りでは最大で、今この瞬間でも殉職者数は積み上がっている。二つ目のKの、殺される。

殺されないためにはどうするか。短絡的には、まず「より性能の良い兵器、武器、そして装備を」となる。

先進国はPKOにあまり兵を出したがらないので、提供する兵力に応じて国連から支払われる外貨を目当てにPKO部隊はどうしても発展途上国や周辺の貧しい国々が主体に構成されることになってしまう。当然、携帯する武器も装備も貧弱で、それを支給しようにも、国連は慢性的な財政難。

つい最近、ブルームバーグが、国連に批判的なトランプ政権と中国という国連拠出金の二大巨頭にロシアが加わり、国連予算の削減と自らの負担軽減で手打ちをしていると報じたばかりだ。(U.S. and China quietly agree on UN cuts as they feud over trade https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-06-27/u-s-and-china-quietly-agree-on-un-cuts-as-they-feud-over-trade

つまり三つ目のK、金がない。

これが、現代PKOの、堂々巡りの3Kの実態である。

 

各国の「わがまま」を許すな

この袋小路の中で、唯一できることは、「気を引き締め」「士気を高める」ことしかない。

だいたいPKOの兵士たちは、「なんでヨソの国の国防をやらされるんだ」と思って来ているから、基本的にやる気がないのだ。

では、どうやって士気を高めるのか? それも、地位協定しか指揮命令の「担保」がないPKO で。

そこで出てきたのが「No caveats」。つまり「“取り扱い説明書”にノーを」というスローガンである。

その立役者になっているのが、サントスクルズというブラジルの陸軍中将。前掲(ゼロからわかるPKOの真実)のリンクの写真に僕と映っているPKO最高司令官で、現在は軍役を退官しているが、現在、PKO改革:A4Pの中心にいる。

国連史上初の「先制攻撃」が許された「Force Intervention Brigade:介入旅団」が投入されたコンゴ民主共和国PKOの最激戦区で軍事ブリーフィングを受けるサントスクルズ将軍と筆者国連史上初の「先制攻撃」が許された「Force Intervention Brigade:介入旅団」が投入されたコンゴ民主共和国PKOの最激戦区で軍事ブリーフィングを受けるサントスクルズ将軍と筆者

「“取り扱い説明書”にノーを」とは何か。

PKOに派兵する国連加盟国には、それぞれの「事情」がある。あまり危険な場所と任務を割り当てないでくれ、というのは、一つの「わがまま」として、特に先進国には、普通に、ある。

国内法で実射の前の威嚇射撃を認めていない国もある。僕が現場で一緒に働いたオーストラリアやニュージランドがそうだ。威嚇射撃の過失を装った故意の実射を封印するためだ。しかし、国連の標準ROE(武器の使用基準)は威嚇射撃を認めているから、異なる国籍の部隊が一緒に行動する場面では混乱が起きる。

さらに、PKO派遣自体の是非が国内で政治的に揉めた末の派遣であったらなら、当然、そういう国の部隊は“撃ちにくく”なるわけで、そんな事情をいちいち認めていたら、軍事作戦全体の士気に影響が出るのは当たり前だ。

そういう各国に固有な“わがまま”の中で最たるものが、「一番安全な時期に、一番安全な場所で、一番安全な任務」しかできない国の部隊である。日本の caveats である。