自衛隊PKO派遣、日本が重ねてきた国際社会への「詐欺」を明かそう

そして会議場は凍りついた…
伊勢崎 賢治 プロフィール

日本政府のデタラメ

僕がそうであったように、国連職員は国際外交官であるから、現地法からの訴追免除の特権を得る。

しかし、軍事要員は、その訴追免除を想定する事犯のスケールが違う。高度な殺傷能力のある兵器を伴い、兵士個人の意思が最大限に抑制され、厳格な「指揮命令」の下で起きる事犯である。

個人が起こす一般過失と、軍隊が起こす軍事過失は、破壊と殺傷のスケールと、それを審理する法体系が違う。

非軍事要員である国連職員であれば、訴追免除されるべき事犯は現地の刑法に準拠するはずだ。しかし、軍事組織による事犯は「戦争犯罪」を規定する国際人道法に準拠する。

個人による一般事犯は結果的に不起訴でも補償をしっかり決着させることで外交問題にさせないことが可能だろう。しかし、軍事による事犯は、その破壊と殺傷の規模に加え、その審理の根拠を国際法に準拠することから、そう簡単にはいかない。「戦争犯罪」は激烈な外交問題に発展するのだ。

特に、新しい国家の誕生への世界からの祝福と引き換えに、内心”イヤイヤ”PKOを受け入れざるをえない南スーダンみたいな政府は、外交問題の誹りをPKOに向けるチャンスを狙って、わざと若いモンをケシかけるような状況がある。

国連は、1999年に発行された国連事務総長告知により、PKOが国際人道法における違反行為をおかした場合、国連地位協定によって現地法から訴追免除を得る代わりに、各PKO兵力提供国がそれぞれの国内法廷によって起訴することが「責任」になった。

当然であるが、国際法上の「戦力」である自衛隊も、道路などを造る施設部隊であろうとPKO部隊の一部として、その国連地位協定の中に入っていた

ここも日本人にはなかなか実感できないのだ。軍事作戦には指揮命令が不可欠である。PKOの司令部は、何を”担保”に、その傘下の多国籍の部隊を服従させるのか。

「お前らが単独では交渉できない地位協定上の特権を国連の信用が引き出し、それをもって国連が現地政府への責任を代表するのだから言うことを訊け」

簡単な話、これなのだ。玉石混淆の多国籍軍の指揮命令の実態は、これ以上のものでも、これ以下のものでもない。これだけである。

だから「地位協定が命」なのだ。

 

歴代のPKOにおいて日本が現地政府と単独の地位協定を結ばない限り──(結んだ事実はない)その時点で自衛隊はPKOの一員ではなくなるが──「自衛隊の指揮権は東京にある」という歴代日本政府の言説は、全くのデタラメである。

繰り返す。歴代の陸上自衛隊施設部隊は「戦力」として国連の地位協定に入り、現地法からの訴追免除の特権を得ていた。

しかし、日本では、「自衛隊はPKF(Peacekeeping Forces:PKO部隊)ではなくPKO(活動)である」というような稚拙な印象操作がメディアを通じてなされ、自衛隊が戦力として扱われることも、地位協定上の訴追免除の特権を得るからこそ、それを国内法廷で起訴する「責任」を負うことも、歴代の政権(もちろん旧民主党政権を含む)と外務省によって組織的にスルーされてきた。

〔拙稿参照:日本はずっと昔に自衛隊PKO派遣の「資格」を失っていた! https://gendai.ismedia.jp/articles/-/51058